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11月3ー5日 場所は原宿 申込制:定員13名(参加資格有) 詳しくはこちら スタッフとして参加予定です。

2017/07/16

PETRI CAMERA Co. High-speed Petri part 5: Petri C.C 55mm F1.7


  
ペトリカメラの高速標準レンズ part 5
ソフトで鮮やかな発色の新感覚レンズ
ボケ味はやっぱりペトリだ
PETRI CAMERA Co., Petri C.C Auto 55mm F1.7
今回取り上げるペトリ 55mm F1.7は、これまで取り上げた同社のシャープな標準レンズとは毛色の異なるモデルで、開放ではピント部をフレアが覆い、滲みを伴う柔らかい描写を特徴としている。ペトリカメラが終末期に送り出した製品なだけに「最盛期をやや過ぎたボクサー。パンチは重いが動きにキレがない」みたいなイメージが脳裏を過り、「どうしたんだペトリ!」と心配にもなったが、写真をよく観察すると解像力は高く、発色は濃厚でパンチ力があるなど、平凡なレンズではない。コントラストも良く、ペトリらしい歯応えのある豪快なボケ味も確かに受け継がれている。この手のソフトな描写傾向はスペックを重視する昭和のカメラオヤジから、さぞ酷評されたに違いない。しかし、デジカメが普及しカメラ女子の人口が一定の割合を占めるなど、時代は変わった。緻密で繊細な画作りを得意とする人やファンタジックな写真を撮る人、特にカメラ女子の中にはこの手の描写を好む人が結構な数いると思う。収差レンズとして再評価されてもよい製品ではないだろうか。
ペトリ C.C Auto 55mm F1.7は評価の高かったC.C Auto 55mm F1.8の後継モデルとして1974年に登場し、ペトリカメラが倒産する1977年までの会社終息期に一眼レフカメラのFTE(1973年発売)とFA-1(1975年発売)に搭載するレンズとして市場供給された[1]。この頃の日本の中小メーカーは自社のシェアを伸ばすため、他社より僅かでも高いスペックの製品を供給することに固執したが、ペトリカメラもその例外ではなく、このレンズはメーカー各社が主軸レンズの口径比をF1.8からF1.7にシフトさせようとする潮流の中で生み出された。レンズ構成は先代のF1.8のモデルと同じ4群6枚のガウスタイプであるが[2]、この時代のF1.7クラスのレンズといえばPentx-M、Hexanon AR、Auto Chinon、ROKKOR-PFなどにみられるように、第2レンズと第3レンズの間に空気層(空気レンズ)を設け5群6枚構成とするのが定石で、収差を抑え込むには4群6枚構成では役不足であった。このレンズの独特な描写は構成を変えずに設計限界の壁を越え、F1.7の領域に踏み込んでしまった代償とも受け取れる。いや、これも計画の内だったのであろうか?

参考
[1]  ペトリ@wiki:ペトリ一眼レフ交換レンズの系譜 標準レンズ編
[2] 光を当て反射面の数を数えると明らかに4群6枚構成になっている

入手の経緯
レンズは2017年2月にヤフオクにてペトリFTにマウントされた状態で売られていたものを入手した。オークションの解説は「ミラーが脱落している。シャッターは降りない。シャッター幕が詰まっている。レンズはカビ・クモリなく綺麗な状態。現状渡し」とのこと。写真で見る限りレンズは綺麗である。ジャンク品であることが宣言されていたが、レンズを道連れにしていると判断、2000円で入札したところ1510円で落札できた。数日後、拭き傷やホコリの少ない綺麗なレンズが届いた。カメラの方はやはりシャッターが壊れており、巻き上げもスカスカなので修理は不可能と判断、こちらはマウント部分を取り出してアダプター作りの材料にすることにした。
PETRI C.C 55mm F1.7: 最短撮影距離 0.6m, 絞り羽根 6枚構成, フィルター径 52mm, 光学系 4群6枚ガウス型, 絞り F1.7-F16, ペトリブリーチロックマウント。なお、レンズのガラス表面には同社が独自にコンビネーション・コーティング(C.C)と呼んでいるシングルコーティングが蒸着されている

 
撮影テスト
レンズの描写の特徴はソフトでありながらも、コントラストや発色が良好なレベルを維持している点である。開放ではコマ収差に由来するモヤモヤとしたフレアがピント部を覆い、柔らかい描写傾向となる。その分だけシャープネスは低下気味でトーンも軽めだが、濁りはなくコントラストや発色は良好な水準を維持している。解像力は依然として同社のF1.8と同等の高い水準にあり、柔らかさのなかに緻密さの宿す線の細い写りとなっている。絞ると急にヌケが良くなりシャープネスとコントラストが更に向上する。背後のボケにはペトリならではのザワザワとした硬さがあり、形を留めながら質感のみを潰したような絵画のような味付けがこのレンズにも継承されている。グルグルボケや2線ボケが目立つことはない。ガウス型レンズ成熟期の1970年代にこんな趣味性の高いレンズを出したペトリカメラには、何か別の狙いがあったのだろうか。



Olumpus PEN E-P3で写真
まずは知り合いのカメラ女子(写真家のemaさん)による写真作例。彼女の作風はこのレンズの性格によくマッチしている。色味はいじってるとのこと。
F1.7(開放), Olympus Pen E-P3(emaさん)

F1.7(開放), Olympus Pen E-P3(emaさん)
F1.7(開放), Olympus Pen E-P3(emaさん)
F1.7(開放), Olympus Pen E-P3(emaさん)
F1.7(開放), Olympus Pen E-P3(emaさん)
F1.7(開放), Olympus Pen E-P3(emaさん)




f1.7(開放), Olympus Pen E-P3(emaさん)

SONY A7Riiでの作例
続いて私がフルサイズフォーマットで撮った写真。

F1.7(開放), SONY A7Rii(WB:Auto) まずは近接での写真をみてみよう。開放でも画質は安定している。ボケ味にはペトリらしさがでており・・・

F1.7(開放), SONY A7Rii(WB:Auto) ・・・形をとどめた妖しいボケ味を醸し出している















F1.7(開放) SONY A7Rii(WB:Auto) ヘリコイドアダプターを用いてレンズの規格を超える近接域を撮っているが、シャープネスはポートレート撮影時と大差ない。この距離を開放でとるというのは無茶なことだが、それなりの画質が維持されているところをみると、接写にも強いレンズのようだ
F1.7(開放), sony A7RII(WB:電球1) 今度は室内で電球と外光のミックス。開放ではフレアがかかりソフトな描写傾向だが、しっかりと解像している
F8, sony A7(WB:曇天) 絞ると急にヌケが良くなり、シャープネスやコントラストが更に向上する。過剰補正型の変化系レンズだ
EE Auto 55mm F1.7とC.C Auto 55mm F1.8の描写比較
最後にEE Auto 55mm F1.7とC.C Auto 55mm F1.8(後期型)の開放描写の比較をおこなった[下の写真]。シャッタースピードやISO値などの撮影条件を同じ値に固定し、ピントは中央の樹木のど真中中で拾っている。カメラはSONY A7を用いた。両者の大きな差はフレア量である。F1.8(写真下段)はスッキリとヌケがよく、そのぶんシャープネスが高い。一方、F1.7(写真上段)はフレアに覆われホワッとした柔らかい写りになり、シャドー部が浮き気味でシャープネスが低下している。ただし、緑の鮮やかさに大差はなく、コントラストや発色がF1.8に比べ悪くなっているという印象はない。むしろ緑はF1.7の方が鮮やかにさえ見える。解像力はほぼ互角で、背後のボケ味がザワザワとしている様子もよく似ているが、F1.7の方が口径比が少し明るい分だけ、ざわつき加減が若干激しい。
C.C Auto 55mm F1.7(上段) と C.C Auto 55mm F1.8 (下段)の開放描写の比較。F1.8の方がフレア量が大幅に少なくシャープネスは明らかに高い。ただし、ソフトなF1.7のほうもコントラストはそれほど悪いものではなく、発色は依然として良好である。緑の鮮やかさはF1.7の方が上かな








2 件のコメント:

  1. こんばんは。

    実にわかりやすい描写表現と数々の作例、素晴らしいです。
    撮影されたお手元のレンズも喜んでいるのでは、と思います。
    私は入手した同レンズで初めて撮影した際、「レンズの裏表がどこか一枚ひっくり返っているのかな?」と真剣に思って分解しました(笑)(正常でした)
    屋外はもちろん、室内を撮影しても春のように眩しくキラキラふわふわしているように感じますが、「歯ごたえのある豪快なボケ」で「PETRIだな~」と安心したりもします。
    PETRI標準レンズ達の特集、大変興味深く拝見させて頂きました。ありがとうございました。

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    1. 想桜さま
      毎度、とても参考になるご意見を多々いただき
      ペトリ特集が途中から楽しくなってゆきました。
      コメントありがとうございました。
      今後ともよろしくお願いいたします

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