おしらせ

 
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オールドレンズ写真学校12月ワークショップ
今月は12月17日(日)の予定です。場所はみなとみらい。詳しくはこちら
既に定員オーバーのためキャンセル待ちとなっています。最近の傾向として募集開始から3日程度で定員が埋るようですので、募集開始日を事前に確認しておく事が肝心です。

2016/08/22

Carl Zeiss Tessar 50mm F2.8 and Pro-tessar 85mm f3.2 (Contaflex lenses) converted to Sony E-mount



コンタフレックスのプロ・テッサー(前編)
Zeiss Ikon Tessar 50mm F2.8 and Pro-Tessar 85mm F3.2
カール・ツァイスのテッサー(Tessar)は3群4枚という比較的シンプルな構成ながら諸収差を合理的に補正することができ、写りも良いことから世界中のカメラに採用され、20世紀中頃まで市場を席巻したレンズである。1902年の登場以来、ツァイスの看板レンズとして重視され、度重なる再設計を経て1925年に口径比F2.7の明るさに達した。しかし、実用的な性能はF3.5までが限界で、旧来からのイエナガラスに頼る設計ではこれ以上の改良の余地を望むことはできなかった。テッサーがこれよりも明るい口径比で収差的に満足のゆくレベルに到達したのは戦後になってからの事で、ドイツ分断前の1947~1948年にツァイスのハリー・ツェルナー(Harry Zöllner)が新種ガラスを用いた再設計で球面収差とコマ収差の補正効果を飛躍的に高めたことによる[文献1]。ドイツが東西に分断された後は東西それぞれのツァイスからテッサーがF2.8の口径比で供給されている。
プロ・テッサー特集の1本目に取り上げるレンズは1956年に西独ツァイス社のレンズ設計士ギュンター・ランゲ(Günther Lange)が新種ガラスを用いて開発したコンタフレックス用テッサーである[文献2]。このレンズはコンバージョンレンズのプロ・テッサー(Pro-Tessar)シリーズとの連携を念頭に据えた設計になっており、コンタフレックスIII型の発売に合わせ、プロ・テッサーとともに1957年に登場している。基本的にはツェルナーによる再設計の流れを汲む製品である。2本目に取り上げるのは中望遠レンズのプロ・テッサー85mm F3.2である。このレンズも1956年にランゲが設計したもので、F3.2の明るさを実現するため前玉に極厚の正レンズを据えたインパクトのある設計構成となっている[文献2]。テッサーからプロ・テッサーに変更することで焦点距離は50mmから85mmに伸びるが、そのための代償は大きく、前玉の単レンズは4群5枚に置き換わり光学系全体としても著しく巨大になっている。
テッサー50mm F2.8(左)とプロ・テッサー85mm F3.2(右)の光学系(文献3からのトレーススケッチ)。構成はテッサー50mmが3群4枚、プロ・テッサー85mmが6群8枚構成である。黄色のレンズエレメントがマスターレンズの部分で、青の部分がコンバージョンレンズの部分。テッサーの前玉(青の部分)を外し、コンバージョンレンズに交換するという仕組みになっている。プロ・テッサーの構成は軸上光線が高い位置を通過する最前部に屈折力の大きな正の極厚レンズを配置することでF3.2の明るさを実現している

入手の経緯
Pro-Tessar 85mm F3.2は2016年3月に米国の古物商からeBayを介して即決価格で購入した。オークションの記述は「Zeiss Ikon製カメラに搭載するビンテージ品のCarl Zeiss Pro-Tessar 85mm F3.2。ガラスに傷はない。キャップとケースが付属している。鏡胴には傷が散見されるが実用において問題はない。写真をよく見てくれ」とのこと。即決価格が52ドル(+送料33ドル)に設定されており値切り交渉を受け付けていたので、5%オマケして欲しいと提案したところ私のものとなった。届いたレンズは拭き傷やバルサム剥離のない良好な状態であった。鏡胴には管財番号らしき数字列の掘り込みがあったため、元々はどこかの公的機関が保有していたレンズなのであろう。焦点距離85mmのモデルは口径比F4の個体が多く、流通量の少ないF3.2の個体は高値で取引されている。ラッキーな買い物であった。プロ・テッサーはバルサム剥離の見られる個体が多い。
続いてTessar 50mm F2.8はContaflex III型に搭載されていたものを入手した。カメラはeBayやヤフオクに大量に出回っており、6500円から10000円程度で入手できる。カメラからレンズを取り出し自分で改造するのなら、レンズのついたジャンクカメラを安く入手するのがよい。私はカメラから取り外したマスターレンズをPK-Eマウントのアダプターに乗せ換えて使用する事にした。カメラの流通は米国版eBayが最も豊富であるが、米国からの配送は送料が4000~5000円程度と高いので、ドイツ版eBayや国内での入手が現実的であろう。
Carl Zeiss Tessar 50mm F2.8(Contaflex): 重量(改造品につき参考)274g, 絞り羽 5枚構成, フィルター径 27mm, 絞り F2.8-F22, 最短撮影距離 2.5feet(0.75m), Synchro-Compurシャッター(max speed 1/125s), 光学系 3群4枚テッサー型



Carl Zeiss Pro-Tessar 85mm F3.2: 重量(改造品につき参考)525g, 絞り羽 5枚構成, フィルター径 57mm前後 (特殊ネジピッチのようで58mmはきつい。57mmは一見ちょうどよさそうだが受け付けない。ネジピッチが異なるのか?), 絞り F3.2-F22, 最短撮影距離 約1.8m前後, Synchro-Compurシャッター(max speed 1/125s), 光学系 6群8枚


参考文献
  • 文献1  Jena review (2/1984) カールツァイス機関紙
  • 文献2 焦点距離85mmと50mmのモデルの米国特許:G.Labge, US Pat.2816482(Filed in 1956)
  • 文献3 構成図:PHOTO-REVUE(French Magazine), Nov.1956, pp.284
  • 文献4  85mm F4の構成図と収差曲線(実測)が「レンズテスト第2集」中川治平・深堀和良著(朝日ソノラマ)P18にある
撮影テスト
Tessar 50mm F2.8による作例
テッサーらしさがよく出ているレンズで、解像力は平凡だが開放でもフレアはよく抑えられており、シャープネスやコントラストは良好で線の太い描写を特徴としている。ピント部は四隅まで安定しており、近接域から遠景まで収差による画質の変動が小さい。グルグルボケは僅かに出るが、目立つほどではない。逆光には比較的強く、ゴーストは全く出ず、ハレーションも激しい逆光時に多少出る程度である。
F2.8(開放), sony A7(AWB): ハイキー気味に撮影しても、しっかりと色が出るので使いやすい
F8, sony A7(WB:auto):シャープで色鮮やかな優等生だが解像力は平凡。テッサーとは、こういうヤツなのだ
F8, sony A7(WB:晴天): 激しい逆光にも耐え、ゴーストは全く出ない
F2.8(開放), Sony A7(WB:晴天): ハレーションも少なく、描写には安定感がある

Pro-Tessar 85mm F3.2による写真作例
開放では僅かにフレアがみられ柔らかい描写であるが、それにも関わらずコントラストは良好で発色も良い。F4以上に絞ればフレアは収まりスッキリとヌケがよくなり、シャープネスとコントラストは更に向上する。開放から発色は濃厚で色のりは良く、ハイキーに撮っても淡くなることはない。階調はテッサーよりも軟らかくなだらかで、炎天下でもカリカリになることはなかった。解像力はテッサー同様に平凡で線の太い描写だが、フィルム撮影の時代のレンズとしては十分な性能なのであろう。デジタルカメラで撮影した写真でも大きく拡大表示しなければ力不足を感じる事はなかった。このレンズの柔らかい描写傾向はポートレート撮影で人物を撮るのに有利である。背後のボケは素直で整っていると言えばそうなのだが、極僅かに出るグルグルボケと相まってブレたような不思議なボケ味になることがある(作例2枚目)。同じ時代に生産されたツァイス・イエナのビオター75mm F1.5にも、どこか似たようなボケ具合を感じることがあった。なお、実写でははっきり示せなかったが、このレンズでは正パワーが前方に偏っている事に由来する糸巻状の歪曲がみられる。
F3.2(開放), Sony A7(WB:晴天): 開放ではややフレアの纏う柔らかい描写となり、ポートレートには使いやすい。F4からはシャープになる。解像力はごく平凡だが、フィルム撮影の時代のレンズとしては、これで十分な性能であろう。露出をかなり持ち上げているが、ライトトーンにはならず、色のりはよい


F3.2(開放) sony A7(AWB): いきなりのモデル登場に絞る間もなく開放でパシャリ。やはり開放では薄っすらと滲みが入るがコントラストは良好。これなら開放でも充分いける
F3.2(開放), SONY A7(AWB):再びポートレート域。絞りはもちろん開放だが、コントラストは維持されている。うっすらと滲みを伴うにも関わらず、ここまで濃厚に写るのはむしろ贅沢。絞るのはもったいない
F3.2(開放), Sony A7(WB:auto): もちろん開放。やはり柔らかい描写である。背後のブレたようなボケ味(かすみ具合)と色ののり具合は同時代のビオター75mm F1.5の描写を思い起こさせる
F4, Sony A7(WB:auto):: こんどは少し絞ってみた。膝のあたりを覆っていたフレアは抑まり、ヌケが良くなっている
F11, Sony A7(AWB):今度は深く絞ってみた。スッキリとした素晴らしい描写だ。発色はやはりコッテリとして濃厚である

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