おしらせ


2013/01/21

M42 Helicoid-hood M42ヘリコイド・フード


フォーカッシング・ヘリコイドをレンズフードにしてしまう逆転の発想

最近のM42フォーカッシング・ヘリコイドには伸縮率の高いものがあり、丈の長さが35mmから90mmまで変化する製品も出てきている。このヘリコイドにM42リバースリング・アダプターを取り付けると、何と丈の長さを自由に変えることのできる伸縮自在のフードになる。こんな製品を今まで待ち焦がれていた方も多いのではいだろうか。なお、フォーカッシング・ヘリコイドと言えば日本製ならBORGブランド、世界的にはeBayで入手できる中国製のノンブランド製品が主流となっている。
 私はイメージサークルの大きな中・大判用レンズをフルサイズ・フォーマットのカメラで用いる機会が多く、純正フードよりも丈が長く、口径の細いフードを探して使っている。しかし、市販のフードでは長さの規格が数限られているため、都合良くケラレの起きないギリギリの長さのフードが見つかる機会は極稀である。その困難をいっぺんに解決してくれるのが、今回発案するM42ヘリコイド・フードというわけだ。

前列の2枚はM42リバースリングで、後列の4本はM42フォーカッシング・ヘリコイド。後列左からBORG OASYS 7840(11-18mm)、BORG OASYS 7842(15-25mm)、中国製M42ヘリコイドユニット(25-55mm)、中国製M42ヘリコイドユニット(35-90mm)である
M42フォーカッシング・ヘリコイドの市販品
伸縮範囲     製品
11mm - 18mm  BORG OASYS 7840(日本製)
12mm - 17mm  中国製(eBay)
15mm - 25mm  BORG OASYS 7842(日本製)
17mm - 31mm  中国製(eBay)
25mm - 55mm  中国製(eBay)
27mm - 47mm  BORG OASYS 7841(日本製)
35mm - 90mm  中国製(eBay)

M42リバースリングアダプターはいろいろな規格のものがオークションやショップで購入できる。ステップアップリングやステップダウンリングと組み合わせれば装着できるレンズの幅が広がる。
M42リバースリングアダプターを介してM42フォーカッシング・ヘリコイド(35-90mm)をCarl Zeiss Jena Tessar 80mm F2.8の前方に取り付けるところ。M42リバースリングアダプターは片側がフィルタースレッドの雄ネジであるため、レンズのフィルターネジに装着できる。もう片側はM42マウントネジになっている。このレンズは35mm判のレンズとして販売されていたが、光学系自体はもともと中判撮影向けに設計されたものなので広いイメージサークルを持つ。深いフードを装着し徹底したハレ切り対策をとる必用のあるレンズだ
Meyer Primotar 80mm F3.5に中国製M42フォーカッシング・ヘリコイド(25-55mm)を装着したところ。このレンズも35mm判として販売されていたレンズであるが、上のTesssar同様に光学系自体は中判撮影用にも対応できる広いイメージサークルを持つものからの流用である。やはり深いフードを必用とするレンズだ


  本稿では2本のレンズ(Carl Zeiss Jena Tessar 80mm F2.8とMeyerのPrimotar 80mm F3.5)に対するヘリコイド・フードの装着例を示している。これら2本はもともと中判撮影用に設計されたレンズをメーカーが35mm判レンズとして売っていたものだ。不思議なことにTessarタイプの中望遠レンズには中判用からの流用が目立つ。何か深い意味でもあったのだろうか。イメージサークルが大きいので光学系が取り込む光の量も通常の35mm判レンズに比べると遙かに多い。35mm判レンズとして用いる場合には、その大半が不要光として内面反射光の供給源になってしまう。深いフードを用いて徹底したハレ切り対策を施さないとレンズ本来の描写力(シャープネスや発色)を損ねることになりかねない要注意レンズだ。
 なお、この手のフォーカッシング・ヘリコイドには内壁に内面反射防止のためのペイントや凹凸構造が施されているのでフードとしての性能も充分である。フロント部が不細工でデザインには改善の余地を残すが、機能や性能は充分のはずである。M42の口径よりも細いフードが必用な場合にはM39リバースリングを介してM39(L39)エクステンションチューブを用いるという手もある。フード用キャップにはM42マウントのリアキャップをそのまま流用すればよい。

2012/12/03

M42-Nikon F mount adapter


Nikonの一眼レフカメラでM42マウントレンズを使用するためのマウントアダプター。補正レンズの無いタイプ(左から3枚目まで)と補正レンズの付いているタイプ(いちばん右の1枚)に大別される
マウントアダプターはどこまで薄く造れるのであろうか?M42-Nikon Fアダプターにみる極薄設計の限界
  マウントアダプターを用いてNikonの一眼レフカメラにM42レンズを搭載する場合、フランジバック長の規格の関係で無限遠のフォーカスを拾うことはできない。しかし、アダプターが極薄く設計されていれば、中望遠レンズで4~6m先の被写体に対してフォーカスを拾うことができ、ポートレート撮影ならばギリギリ何とかこなせる。M42-Nikon Fアダプターは極薄設計が求められるストイックな製品分野なのである。いったい、どこまで薄く造れるのであろうか?
  現在、eBayなどの市場に出回っているM42-Nikon Fアダプター(補正レンズ無しタイプ)は一部のEU製品を除き、その大半が中国製とロシア製で占められている。一般にこの種の製品にはブランド名がなく、設計仕様も公開されていない。中国製アダプターの場合、eBayでの販売価格は日本への送料を含めても1.88ドル前後(約150円)からと鼻血が出る程安い。典型的な製品を以下に写真で示す。

マウント部がフラットなタイプの中国製アダプター。流通価格は送料込みで2ドル弱からと最も安い(流血アダプター)。素材はアルミ合金で厚みは0.9mm(実測)程度である。シルバー色のタイプも存在するが、こちらはもう少し値がはる

外枠がコの字型に折れ曲がったタイプの中国製アダプター。流通価格は送料込みで3ドル強くらいからとなっている。アダプターの厚みは0.65mm(実測)と中国製の中ではかなり薄い製品だ。シルバー色の真鍮製タイプも存在するが、こちらの厚みは1mm程度と少し厚めに設計されていた

補正レンズが入っている中国製アダプター。香港製として売られていることもある。eBayでは8ドル程度(送料込み)からみつかる。装着するとレンズの焦点距離が1.4倍換算になってしまうが無限遠のフォーカスを拾うことができる。ただし、余計なレンズが一枚加わる分だけレンズ本体の性能を損ねることになる

  値段が極めて安いので、幾つか異なる製品を購入し使い勝手を比較してみることにした。すると、面白いことにアダプター毎にフォーカスを拾うことのできる撮影距離の範囲が異なるのである。もちろん、この種のアダプターで無限遠までのフォーカスを拾うことは物理的に不可能である。あるアダプターに75mmの中望遠レンズを搭載し用いてみたところ、ピントは最長で4.7mまで拾うことができた(距離はレーザー距離計で計測)。ところが同じレンズを別のアダプターで用いた場合には3.5m程度先までがやっとであった。こうした差異が生まれる原因はアダプターの厚みが製品毎に異なるためだ。今回入手したアダプターは全部で5種類だが、ノギスで各アダプターの厚みを計測してみたところ、0.5mm~1mmと製品ごとにバラバラであることがわかった。最も薄く設計されていたのはEU製の0.5mmタイプでeBayでの価格は32ドルと、この種の製品にしては高値で売られていた。中国製のアダプターの中にも比較的薄く設計されているものがあり、私が入手した中で最も薄く設計されている製品は0.65mm厚であった。薄ければ薄い程フォーカスをより遠くまで拾えるので実用性は高い。しかし、その反面で耐久性が落ちる。そこで、いくつかのアダプター製品では外枠がコの字型に折れ曲がった構造を持つなど工夫がみられる。マウント接触面の歪みを抑え耐久性を向上させるとともに、カメラ側のマウント座金に対して包み込むようにフィットするのでガタも出にくいというわけだ。

こちらのアダプターは厚さが0.9mmある。Nikonの一眼レフカメラにマウントし焦点距離75mmの中望遠レンズで撮影してみたところ、フォーカスを拾うことのできる最長距離は3.8mであった
こちらのアダプターは中国製だが厚さが0.65mmと入手したものの中では比較的薄く設計されていた。Nikonの一眼レフカメラにマウントし焦点距離75mmの中望遠レンズで撮影してみたところ、フォーカスを拾うことのできた最長距離は4.3mであった


おこれは経験則だが、薄型のアダプターを手に入れたいならば真鍮製よりもアルミ製を選ぶ方が安全だ。今回注目したM42-Nikon Fアダプターの場合、今のところ私が調べた範囲での最薄製品は0.5mm厚のアルミ製アダプターであった。この程度の厚みがスペーサーを持つアダプターにおける設計限界なのかもしれない。0.7mm厚で造られているEXAKTA--EOSアダプターや0.6mm厚のROLLEI QBM--EOSアダプターなどは耐久性的に限界に近いということになる。Leica-RとNikon Fはフランジバック長の差が0.5mmなので、一見するとアダプターを造れるのではと思い込んでしまうが、Leica-RマウントのバヨネットはNikon Fマウントの口径に収まらないのでアダプターの設計は物理的に不可能となる。仮に造れたとしても0.5mm厚の軽金属でLeica-Rマウントの重量級レンズ達を支えるだけの耐久性が得られるのかどうかは疑問だ。そのかわりにLeica-Rレンズのマウント自体を取り外しNikon Fマウントに変換することは可能で、そのための交換マウントが市販されている。