おしらせ

 
イベント案内
オールドレンズ写真学校ワークショップ
9月3日(日)場所はアクアパーク品川 申込制:定員15名(現在キャンセル待ちとのこと) 詳しくはこちら スタッフとして参加予定です。

オールドレンズxポートレート写真展2
9月16日(土)―9月18日(月・祝)場所は学芸大前 こちらも関連ワークショップですので、お知らせいたします。詳しくはこちら

オールドレンズ写真学校ワークショップ
9月23日(土)場所は巾着田 申込制:定員15名(既に申込が続々と入っているそうです。最近、定員オーバーが多いので申込はお早めに) 詳しくはこちら スタッフとして参加予定です。


2013/11/20

Schneider-Kreuznach Retina-Tele-Arton 85mm F4 (DKL)





銘玉の宝庫デッケルマウントのレンズ達
PART2Retina-Tele-Arton 85mm F4
四隅まで高画質な
Xenotarタイプの中望遠レンズ
Schneider(シュナイダー)社もまたデッケルレンズに力を注いでいたメーカーであり、その徹底ぶりは同社が誇る主力ブランドのほぼ全てをラインナップ展開していたほどである。主にレチナ・デッケル機の交換レンズとして広角レンズのCurtagon(クルタゴン)、標準レンズのXenar(クセナー)とXenon(クセノン)、中望遠レンズのTele-Arton(テレ・アートン)、望遠レンズのTele-Xenar(テレ・クセナー)を生産していた。今回取り上げるデッケル特集の2本目は同社がTele-Xenarの上位ブランドとして1957年から1971年まで生産し、中望遠レンズの中核に据えてていたTele-Arton 85mm F4である。このレンズは口径比がF4と控えめで最短撮影距離が1.8mと長いため人気はなく、WEB上にも写真作例は少ない。中古市場では手ごろな価格で取引されているレンズである。ところが使ってみると驚いたことに実にシャープな写りなのである。知れば知るほどこのレンズの正体に興味がわいてきたので構成図を探してみたところ、下の図のようなものが見つかった。何と4群5枚のXenotar (クセノタール)である。Xenotarと言えば高解像で硬階調、切れ味の鋭い描写を特徴とし、中大判カメラ向けに供給された同社が誇るプロフェッショナル用レンズとして知られている。中古市場では現在も500-1200ドル程度と高値で取引される高級ブランドであるが、対するTele-Artonはデッケルレンズ自体が全体的に安値で取引されることもあり、僅か100ドルから150ドルで手に入る。Xenotarのシャープな写りを手軽に楽しむことができる穴場的なレンズと言えるのではないだろうか。
Tele-arton F4/F5.5の光学系(左が前方で右がカメラ側):Australian Photography Nov. 1967に掲載されていた図をトレーススケッチした。レンズの構成は4群5枚の望遠Xenotar型であり、普通のXenotarよりも前後群の間隔が広い。このタイプのレンズ構成は望遠レンズによくある糸巻き状の歪曲を後群の正の空気レンズで効果的に補正できるという優れた長所がある。一方で焦点距離(望遠比)を大きくとると球面収差の短波長成分のみがオーバーコレクション側に大きくなる短所がある(「レンズ設計のすべて」辻定彦著参照)。シュナイダーの望遠レンズ(焦点距離135mmと200mmの2種)がTele-XenarブランドがらTele-Artonブランドに置き換わらなかったのには、こうした性質を憂慮したためではないかと考えられる。なお、Tele-Artonには大判用(6x9や5x4)に供給された口径比F5.5、焦点距離180 /240 /279 /360mmのモデルも存在する。こちらは登場が35mm判よりも少しはやく、180mmF5.5のモデルが1955年から登場している。また、リンホフ用に1968年8月から供給された180mmF4のモデルは例外的に3群6枚構成である
Tele-Artonは旧西ドイツのBraun(ブラウン)社から発売されたレンジファインダーカメラSuper Colorette II (1956-1959製造)の交換レンズとして1957年に登場し、その後、Kodak社のレンジファインダーカメラRetina IIIS (Bessamatic互換)が1958年に採用した新規格のデッケルマウントにも対応している。1962年にはRobot用に90mmF4のモデルが108本、Edixa用(M42マウント)に85mmF4のモデルが100本造られ、更に1967年にはデッケルマウントの90mm F4も登場している。WEB上では各所で90mmのモデルが85mmのモデルの後継品であるとする見解を目にするが、この解釈はどうも間違いのようである。90mmの登場後も85mmのモデルの生産は続き、シュナイダーの製造台帳では1971年に生産された85mmの個体を確認することができるからである。そこで台帳上にて90mmF4のモデルのルーツを追うと、同社が1954年に僅か5本だけ試作したLongar-Xenotar 90mm F4という試作品に辿り着く。この記録は90mmのモデルが85mmのモデルよりも早く開発されていたことを意味しており、Tele-ArtonがXenotarをルーツとするレンズであることを裏付ける証拠にもなっている。設計者はギュンター・クレムト(Günther Klemt )であろう。

入手の経緯
本品は2013年9月にeBayを介し米国の古物商から即決価格166ドル(120ドル+送料30ドル+関税等仲介手数料16ドル)で落札購入した。オークションの解説は「西ドイツ製のTele-Arton。硝子に傷やカビ、汚れ、その他の悪い部分はない。フォーカスはスムーズで絞り羽の開閉はスムーズだ。鏡胴には軽度な傷があるが依然として新品に近いコンディションである。純正ケース、箱、ステッカー、マニュアル(1959年印刷)がつく」とのこと。状態はよさそうである。届いた品には後玉のコーティングに極軽い拭き傷があったものの、実写には影響の無いレベルである。eBayでの相場は100-150ドル程度であろう。
重量(実測)130g, 絞り羽 5枚, 最短撮影距離 6ft(1.8m), フィルター径(専用バヨネット式), 4群5枚Xenotar型, Kodak-Retina(DKL)マウント。EOS5D/6D系では無限遠近くを撮影する際にミラー干渉する。マウント部の溝はレンズファインダー機に対応するための距離計連動カムである。初期のデッケルレンズにはこのカムが多くみられるが、フォクトレンダー製レンジファインダー機の製造計画が進まず消滅している




撮影テスト
前エントリーで取り上げたテッサータイプのColor-Skoparとは発色の傾向が全く異なることが一目瞭然でわかるはずだ。Color-Skoparはテーマを選ばずにどんなシーンでも万人受けする写りであるのに対し、Tele-Artonはシュナイダーらしい青みの強い発色を特徴とする上級者向けのレンズである。使い方次第では美しく幻想的な写真効果が得られるが、使い方を誤ると重々しい病的な雰囲気に呑み込まれてしまうので、このレンズを用いる際にはテーマを慎重に選ぶ必要がある。明らかに普通の写りではないので、ツボに填るとオールドレンズの底力(奥深さ)を体感できるはずだ。例えば明け方や日没間際の低照度な条件でハイキーな写真を撮ると、この世のものとは思えない素晴らしい写真が撮れる。反対にアンダー気味に撮ると重苦しい雰囲気が増すが、こうした性質を廃墟など無機質なものを撮る際に積極的に活用するという手もある。開放から解像力、コントラストなどの基本性能がずば抜けて高く、硬質感の高い鋭くシャープ階調描写はクセノタール型レンズならではの特徴である。ピント部は四隅まで高画質で、控えめな開放F値のためボケは概ね安定している。ボケ味がクリーミーになるという事前情報を得ていたが、どうもよくわからなかった。

撮影条件
フィルム撮影: カラーネガフィルム Fujicolor SuperPremium 400  1本分を使用
デジタル撮影: EOS 6D(遠方撮影時にミラー干渉が起こるのでミラーアップモードで撮影)

今回は事情があり、このレンズと長く付き合うことができなかった。2013年9月22日の午後に京都で開催されたレイノカイのお散歩撮影会で撮った8枚の作例をお見せする。

F5.6, フィルム(Fujicolor S.P.400ネガ): シャドー部がクールトーン気味の発色になるのはシュナイダーレンズの特徴だ



F4(開放), フィルム(Fujicolor S.P.400ネガ): 開放でも画質には安定感があり、四隅まで高解像でボケも素直だ



F4(開放), フィルム(Fujicolor S.P.400ネガ): この距離でグルグルボケが出ないのは口径比が控えめであるおかげだろう



F5.6, EOS 6D(AWB): こんどはデジタル撮影。フィルム撮影の時と同様にクールトン気味な発色傾向が得られている
F5.6, EOS 6D(AWB): 近接撮影でも画質は良好である。 デジタルカメラには不得意な紫の発色だが淡白になならず忠実な色再現である

F4(開放), フィルム(Fujicolor S.P.400ネガ):ハイライト部のまわにのモヤモヤ感は出ていない。開放からキッチリと写るレンズだ
F5.6(開放), フィルム(Fujicolor S.P.400ネガ):緑が黄色に転びやすいのはシュナイダーのレンズによく見られる傾向だ







F5.6, EOS 6D(AWB)::再びデジタル撮影。ご覧と通りに優れた解像力である

2013/11/04

Voigtländer COLOR-SKOPAR X 50mm F2.8(DKL)




銘玉の宝庫Deckelマウントのレンズ達
PART1: COLOR-SKOPAR X
フォクトレンダー・デッケル機のエントリーレンズ
「なぜならレンズがとても良いから」。1756年に創業した世界最古のカメラメーカーVoigtländer(フォクトレンダー)社がカメラの宣伝に用いたキャッチコピーには自社の高性能なカメラについてではなく、レンズの素晴らしい性能を称える文句が使われた。Color-Skopar(カラー・スコパー)は同社が戦後に生産した多くのカメラに標準搭載され、写りが良いことで世間から高い評価を得ていたテッサータイプの標準レンズである。レンズを設計したのはNoktonやUltronなどの銘玉を設計した人物として知られるA.W.Tronnier(トロニエ博士)で1949年と1954年にそれぞれF3.5とF2.8のモデルを世に送り出している(文献2)。トロニエ博士は戦前のSchneider社に在籍していた頃に同じTessar型レンズのXenarを開発した経験があり、Color-SkoparにはXenarの開発で培ったノウハウが生かされている。一般にColor-SkoparはXenarよりも更に硬階調でシャープ、高発色なレンズと評されることが多く、鋭い階調性能と高いコントラストを持ち味とするTessar型レンズの長所が最大限に引き出されていると考えてよい。技巧性に富むVoigtländer社のマニアックなカメラに相応しい尖がった性格のレンズである。
重量(実測) 138g, 最短撮影距離 1m, 絞り羽 5枚, 3群4枚テッサー型, フィルター径 40.5mm, 製造年:1959-1967年(DKLマウント),製造本数 20万本弱(DKLレンズのみカウント), EOS5D/6D系に搭載する場合もミラー干渉は起こらない。このレンズはビハインドシャッター方式のカメラに搭載するレンズであり絞りリングは標準装備されていない。マウント側についている黄色マークは、このレンズがウルトラマチックで使用する際にカメラ本体に開放F値を伝える細工がしてあることを意味している。このマークがついている製品ロットは後期型の比較的新しい個体である






Skoparブランドが初めて世に登場したのは1926年である。最初のモデルはTessar型ではなく前後群をひっくり返した珍しい構成の反転Tessar型(あるいはアンチプラネット型とも言う)で口径比はF4.5であった。この種の構成を持つレンズにはSteinheil社のCulminar 85mmF2.8がある。Tessarタイプのレンズに比べやや軟調で発色もあっさりとしており、シャープネスでは一歩及ばなかった。直ぐに設計が見直され、翌1927年にTessarタイプへと構成が変更されている。その後、1930年代後半に口径比がF3.5まで明るくなり、初代Vito(1939-1949)などの35mm判小型カメラに搭載されるようになっている。1949年にはTronnier博士の再設計によりカラー撮影にも対応したColor-Skopar F3.5に置き換えられ、モデルチェンジを間近に控えたVitoの最終ロットに搭載された。1953年にはF2.8の更に明るいモデルもProminent用として登場し、F3.5のモデルとともに後継カメラのVito Bなどに標準搭載されている。なお、Color-SkoparはVoigtländer社が最も多く製造したブランドであり、デッケルマウント用は1959年から1967年までに20万本弱もの数が生産されていた。現在でも中古市場に数多くの製品個体が流通しており相場は安値で安定している。ちなみに同社で2番目に多く製造されたデッケルレンズはSkoparexで製造本数は6万本強、3番目はSepton(ゼプトン)で製造本数は5万2千本弱である。
Color-Skopar F2.8の構成図(左が前で右がカメラ側)。Vitessa T用として文献1のP112に引用掲載されていたものをトレーススケッチした。構成は3群4枚のTessar型で、第1レンズに厚みがあるのが特徴である
デッケル機は絞りの開閉をカメラの側でコントロールする仕組みになっている。デッケルレンズは絞りリングが省略されており、マウント部の近くに絞り羽根を制御するためのブラケットが突き出ているのみである(上の写真)。このブラケットを矢印の方向にスライドさせることで絞りを開閉させることができる。デッケルレンズ用のマウントアダプターにはブラケットをスライドさせるための制御ピンがついており、アダプターに内蔵された絞りリングとブラケットが制御ピンを介して連動できるようになっている
デッケルレンズ用のマウントアダプター。絞りリング(赤矢印)を回すと制御ピン(青矢印)が連動して動き、レンズのブラケットを引っ掛けながらスライドさせることができる
デッケル-M42マウントアダプターをレンズに装着したところ。装着時はアダプター側の固定ピン(赤矢印)をレンズのマウント部にある窪みにはめロックする。解除するには手前のレバーを青矢印の方向に押せばよい
コードXの謎を追う
レンズの銘板に誇らしげに刻まれたXのアルファベット。このコードは何を意味しているのだろうか。Color-Skopar Xに興味を持つきっかけは、そうした些細なところからであった。ちなみにSkoparというレンズ名はギリシャ語で「見る、観察する」を意味するSkopeoを由来としている。末尾に「X」のつく固有名詞と言えば、トヨタ自動車の「マークX」や「MAC OS X」などがあり、これらは通産10作目の製品ということを意味している。他にも「ミスターX」や「惑星X」「Xデー」「プロジェクトX(NHKのTV番組)」などがあり、これらには未知であるという意味が込められている。おそらく方程式の変数Xあたりが由来なのであろう。しかし、COLOR-SKOPARの場合は、これらのどれにも該当しない。レンズの場合にはこの種のアルファベットがガラス面に蒸着されたコーティングを意味する場合もあり、Zeiss製レンズのT(Transparent)コーティングやMeyer製レンズ等のVVergütung)コーティングなどがその典型である。また、Kodak社のレンジファインダー機Retina IICの交換レンズ(コンバージョンレンズ)にはCのイニシャルが記されている。レンズに関して言えば直ぐに思い当たるのはこんなところであるが、「X」なんてのは今まで聞いたことがない。イニシャルだと仮定してもXで始まる単語なんてそう多くはない。しばらくこのコードの謎に考えを巡らせ知人を巻き込みながら盛り上がっていたのだが、浅草のハヤタさんが答えを持っていた。このレンズはSyncro Compur X(シンクロコンパーX)というシャッターに搭載するためのレンズなのである。Compur Xシャッターはフラッシュにシンクロできる機構を内蔵しており、シャッターが降りるとX接点を介して信号が放たれフラッシュが発光する仕組を持っていた。ただし、レンズ自体にはこの機構に応じるための細工が何一つ無いとのことで、わざわざ銘板にXを明記した意図についてはハヤタさんも首を傾げていた。
最後にここからは全くの想像だが、Spiral説を述べてみたい。レンズが造られた当時のVoigtländer社にはProminentマウント(1954年~)、Vitessa-T(旧デッケル)マウント(1956年~)、Bessamatic/Ultramatic(新デッケル)マウント(1959年~)の3種のマウント規格が存在し、混乱が避けられない状況であった。そこで、Prominent用に供給された交換レンズがSkoparon, Ultron, Nokton, Color-Skopar, Dynaron, Super-Dynaronなど末尾が"ON"でほぼ統一されていたのに乗じ、1956年に登場するBitessa-Tの交換レンズでは末尾を"T"で統一することにして混乱を避けた。Skoparet, Dynaret, Super-Dynaletなどである。ただし、Color-Skoparだけは戦前から供給されていたブランド名なのでルールから外れてしまったのである。Prominent用レンズと間違えVitessa-T用レンズを持ち出すという混乱はやはり起こった。そこで、新しいデッケルマウントの規格であるBessamatic/Ultramatic用レンズ(1959年~)では末尾を"X"で統一するルールが徹底された。Skoparex, Dynarex, Super-Dynarexなどである。ところがColor-Skoparの末尾にXを付けると、今度はSkoparexとの識別ミスが起こるため、仕方なくColor-Skopar Xとしたのである。ちなみにSepton、Skopagon、Color-LantharはBessamatic/Ultramatic用レンズから新たに導入された名称なので、この手の混乱を避けることができた。もし、次の新しいマウント規格が出ていたら、Septon Xとでもするつもりだったのであろうか。

参考資料
  • 文献1:「ぼくらのクラシックカメラ探検隊:フォクトレンダー 第2版」Office Heliar 1996年初版、2000年3月改定版発行
  • 文献2:Color-Skoparの米国特許:US-Patent 2.573.511
レンジファインダー機に対応するため設けられた距離計連動用のカム。手元のレンズの中ではColor-Skopar XとTele-artonにこの機構を確認することができる。このカムは初期のデッケルレンズに多く見られるが、やがてデッケルマウントのレンジファインダー機がなくなり不要になたっため消滅している
入手の経緯
本品は2012年夏にeBay(UK版)を介してイギリスのコレクターから70ドル+配送料15ドルの合計85ドルで落札し入手した。このセラーはコレクションの整理と言いながら他にもいろいろなレンズを出品していた。コレクターであれば検査の精度については下手な業者よりもマトモなケースが多い。レンズはEX+++コンディションとのことである。1週間後に届いたレンズは写りに影響の無いレベルのホコリの混入があったが、ガラス自体は傷の無い綺麗な状態を維持しており問題なしの品であった。eBayでの相場は60~80ドル程度と求めやすい価格である。中古市場に多く出回っているレンズなので、じっくり待って状態の良い品を購入するとよいであろう。

撮影テスト
四隅まで破綻無くクッキリと鮮やかに写す。Color-Skoparの描き出す画にはTessarタイプのレンズならではの特徴がよくあらわれている。軟らかいトーンによるドラマチックな演出効果を期待することはできないが、代わりに鋭くシャープな階調描写で被写体を力強く鮮やかに表現できるのが、このレンズの本領である。収差はよく補正されており開放でもハロやコマに由来するフレアは殆んどみられないことから、スッキリとヌケのよい写りで、ややコッテリ感のある高彩度な発色である。コントラストは高く、特にハイライト域の階調が豊富で、白がクリアに写るところがとても印象的に感じる。一方、シャドーの階調は硬めで、ネガフィルムを用いた撮影では暗部にむかってグラデーションがストンと急激に落ちる傾向が顕著にみられた。こういうのをカリカリの描写と呼ぶらしい。ただし、デジタルカメラで使う場合にはトーンが幾らか持ち直し丁寧に表現されているようで、フィルム撮影の時よりも暗部が持ち上がり、なだらかな階調変化をとりもどしている。解像力自体は平凡で、鋭い階調描写による見た目の解像感は高いもののディテールの再現性は高くない。この様子はピクセル等倍まで拡大表示するとベタッとした絵になっていることからもよくわかる。優れた設計者の手で生み出されているとはいえTessarタイプはどう転んでもTessarタイプ。鳶が鷹を生むようなことはない。ただし、ピント部の画質の均一性は高く、四隅で解像力不足を感じることは無かった。ボケは概ね安定しているが距離によっては像が四隅で少し流れる傾向がみられる。口径比F2.8のテッサー型レンズとしてはこの程度の像の流れは普通のレベルであろう。ボケ味は若干硬めで僅かに2線ボケが出ることもある。TessarタイプのレンズにとってF2.8は安定した描写力を維持できる設計限界ギリギリのラインであるが、Color-Skoparの描写力は開放から概ね安定しており、どの撮影条件においても大きく転ぶことがない。値段が安い割に優れた描写力を持つレンズではないだろうか。

F4, 銀塩(ネガFjicolor S400):  クッキリと鮮やかで高彩度な発色である。階調描写は硬く鋭い。ヌケのよいクリアな描写である
F2.8 銀塩(ネガFujicolor S400): 開放でもハイライト部からハロやコマが出ずコントラストは高い。このレンズは濁りのない発色のためか白がとても綺麗に写る。やはりダブルガウス型レンズのようなフワフワとした軟らかいトーンを期待することはできないが、被写体を力強く鮮やかに表現することができるのは、この種の硬く鋭い描写を持ち味とするレンズならではの性質である
F2.8(開放), EOS 6D(AWB): 今度はデジタル撮影。ピーカンの晴天下だが、シャドー部が潰れず階調には適度な軟らかさが残っている。距離によっては四隅でアウトフォーカス部の像が僅かに流れるがグルグルボケには至らない。ピント部は四隅まで高画質である。ボケはやや硬めで、奥の手すりには2線ボケの傾向が出ている。F2.8の口径比を持つテッサータイプのレンズとしては、かなり優秀な描写力だ