おしらせ


2011/08/26

Kamerabau-Anstalt-Vaduz Kilfitt-Makro-Kilar E(APO)
4cm F2.8 (M42) Rev.2 改訂版

マクロキラーは今日のマクロレンズの原型となるレンズである。フィルター枠にある赤・青・黄色の3色の刻印は本品が高級なアポクロマートレンズであることを印している。アポクロマートとは特殊な硝材で作られた3枚のレンズを組み合わせによって色収差を補正する仕組み
鋭い描写と色のりの良いクッキリとした発色、軽く小さなボディが魅力。熱狂的なファンがいる

カメラとレンズの設計者で知られるHeintz Kilfitt[ハインツ・キルフィット] (1898–1973)は1898年にドイツのHöntropという町に時計メーカーの息子として誕生した。若いころの彼は時計の修理工であったが、写真機やレンズにも興味を持ち、後にカメラ産業に乗り出していった。彼の最初の成功は1933年で学生の頃に設計した超小型カメラである。このカメラはスプリングモーターによる自動巻上げの機能を内蔵し、24x24mmの小型フレームフォーマットを持つというもので、後の1934年に発売されるRobot Iというカメラのプロトタイプとなった。彼が考案したRobot Iの優れた機構やコンパクトな設計には当時のLeitzも衝撃を受けたといわれている。彼は1941年にドイツ・ミュンヘンの小さい工場を買収し光学・精密機器の生産を開始、1947年には欧州の小国リヒテンシュタインでKamerabau-Anstalt-Vaduz(KAV)という会社を創設すると、レンズやカメラの生産を本格化させるようになった。KAV社は後発の光学機器メーカーであったが、1955年に世界初のマクロレンズMakro-Kilar 3.5/40を開発、1959年には米国Zoomar社と協力し、世界初のスチルカメラ用ズームレンズとなるフォクトレンダー社Zoomar 36-82mmをOEM生産するなど前衛的な製品を世に送り出し一躍有名企業へと成長した。その後、会社はドイツのミュンヘンへと移転され、社名もKAVからKilfittへと変更されている。Heintz Kilfittは1968年に70歳で引退を決意し、会社を米国のZOOMAR社へと売却、その5年後に死去している。
今回、再び紹介するのはKAV社がKilfitt-Makro-Kilar 40mm F3.5/の改良モデルとして1958年にリヒテンシュタインにて製造した同ブランド2代目のKilfitt-Makro-Kilar 40mm F2.8である。F3.5の初期モデル同様、リヒテンシュタインで製造されており、フィルター枠には当時の社名であるKamerabau-Anstalt-Vaduzのロゴが刻まれている。F2.8の2代目は後に会社がドイツ・ミュンヘンに移転した頃を境にデザインが変わり、さらにKilfitt社がZoomar社へ買収された後は、Zoomar社製マクロズーマター銘に変わるなどマイナーチェンジにを繰り返し、複数のモデルが存在している。ただし、レンズの製造は一貫してミュンヘンのkilfitt工場が担い、zoomar社傘下においても生産ラインは1971年まで続いた。
2代目Kilfitt-Makro-Kilar 2.8/40には最大撮影倍率が0.5倍となるシングルヘリコイド仕様のモデルEと、等倍でダブルヘリコイド仕様のモデルDの2種が存在する。モデルEとモデルDの差異はヘリコイドの繰り出し長のみであり光学系は同一(3群4枚のテッサータイプ)である。フィルター枠に刻まれた極小のロゴがいかにもマクロ撮影用レンズらしい雰囲気を醸し出し、まるでミクロの世界にカメラマンを誘っているかのようにみえる。カラーバリエーションには黒と銀の2タイプが存在し、流線型の美しい鏡胴には、とても50年前のものとは思えないモダンなデザインセンスを感じる。対応マウントはM42以外に少なくともエキザクタ、アルパ、コンタレックス、レクタフレックスがある。これらのマウントをM42用に変更できる交換改造マウントが存在し、これを用いた改造品が中古市場に多く流通している。なお、マクロキラーには中望遠の90mmの製品も存在し、こちらは40mmのレンズよりもお値段がだいぶ高い。
最大撮影倍率 x0.5(model E), x1.0(model D), フィルター径 29.5mm, 重量(実測値) 144g, 焦点距離40mm , 開放絞り値 F2.8, 最短撮影距離 10cm, プリセット絞り(絞り値:2.8-22), プリセット後は無段階での絞り設定となる。マウント部に絞り連動ピンはついていないので、ピン押しタイプのマウントアダプターを用いる必要性はない。カラーバリエーションは銀と黒, 本品はリヒテンシュタイン製で純正M42マウント用。左の写真は回転ヘリコイドを最大まで繰り出したところ。本品はType-Eなのでシングルヘリコイド仕様だが、Type-Dの場合はヘリコイドが2段構造(ダブルヘリコイド)であり鏡胴はさらに延びる。左の写真のように後玉がせり出しているので、銀塩カメラやフルサイズセンサー機で使用する場合の多くでは、遠方撮影時にミラー干渉を起こすので要注意。ミラーの動作がパラレルリンク方式のα900やミラーの小さいPENTAX SVなどでは、ひょっとしたらセーフかもしれない
★入手の経緯
Makro-kilar 40mmは後玉が大きく飛び出しているため、APS-Cセンサー機やミラーレス機の登場までまともに使えるカメラが無く、安値で取引されていたが、最近は相場も人気も急上昇し高値で安定している。私が手に入れた個体は2009年9月29日にeBayを介してドイツの中古レンズ専門業者から落札した。商品の解説は「エクセレントコンディションのマクロキラー。ガラスは少しの吹き傷がある程度で綺麗。絞りとフォーカスリングの動作はパーフェクト」。出品者紹介には二枚目の若いお兄ちゃんの写真が写っている。フィードバックスコア1900件中99.8%のポジティブ評価なので、この出品者を信頼することにした。いつものようにストップウォッチを片手に持ちながら締め切り数秒前に250ユーロを投じたところ、206ユーロ(2.7万円弱)にて落札できた。送料・手数料込みの総額は216ユーロ(2.82万円)である。なお本品のヤフオク相場は3万円前後、海外相場(eBay)は300-400㌦(2.7-3.6万円)。商品は落札から10日で手元に届いた。恐る恐る状態を精査すると、中玉端部のコーティング表面にヤケ(コーティングの経年劣化)がある。他にもレンズ内にチリがパラパラとあり、お約束どうり薄っすらとヘアライン状の吹き傷もある。年代物とはいえ説明不足は明らかで、本来ならば完全に返品となる状況だが、今回はこれが欲しかったので、返品は避けオーバーホールに出すことにした。ガラスの不具合が改善しますようにと近所の神社にお参りしたのが効いたのか、2週間後に修理業者から返ってきたレンズはかなり改善し、チリも除去され、実力を見るには十分なレベルとなっていた。

★撮影テスト
Makro-Kilar 40mmの撮影テストは今回で2回目となる。オールドレンズは発色に癖のあるものが多いが、本レンズは1950年代に造られた製品とは到底思えない実にニュートラルな発色特性を示す。テッサー型レンズらしく、コントラストの高さと階調変化の鋭さ、色彩の鮮やかさと色のりの良さが際立っている。黒潰れに強いデジカメの特性にも助けられ、シャドー部がカリカリに焦げ付くことはなく良好な階調表現が得られる。黒潰れが避けられないケースは真夏日の晴天下でF11以上深く絞る場合のみであった。本品も含めテッサータイプのレンズでは銀塩カメラよりもデジタルカメラの方が相性が良いのかもしれない。解像力はテッサータイプ相応であり、お世辞にも類似スペックのガウス型マクロ撮影用レンズと肩を並べる性能とは言い難い。開放絞りの場合、中遠方はスッキリと写るが近接ではやや像が甘く、ポワーンとした柔らかい描写を楽しむことができる。1~2段絞れば被写体の輪郭が締まり、近接撮影でもスッキリと写るようになる。絞りこんだときの解像力はF11まで向上し、回折効果による画質の低下はF16以上深く絞ったところでようやく表れる。最小絞りがF22まで用意されているのは、単なる飾りではないようだ。グルグルボケや四隅の流れなどはなくアウトフォーカス部の像は概ね安定している。球面収差の補正が過剰気味なのか中距離域で2線ボケに遭遇することがあったが、近接撮影では収差の増大に助けられ柔らかく綺麗なボケ味が得られている。前評判どうりに欠点の大変少ない優れた描写力を備えたレンズのようで、これなら人気があるのもうなずける。解像力よりも鋭い階調表現で勝負するレンズといえるのだろう。
F8 NEX-5 digital:近接撮影時のボケ味には不安材料は全く無い。`色のりもよいしボケも綺麗だ
F5.6  NEX-5 digital: テッサータイプらしい安定した描写だ
F5.6 NEX-5 digital, AWB: 真夏日の強い日差しであるが、シャドー部が黒つぶれせずに階調がよく残っている

F11, -1.7EV EOS Kilss x3, AWB:  深く絞るときの像の鋭さは流石にマクロレンズ。ただし、絞りが深いと、少し階調表現が硬めになる

上段F2.8/ 下段F8, EOS kiss x3, AWB: マクロレンズとはいえ開放絞りでは像がやや甘くなるので柔らかい描写表現が可能。1度で2度おいしい類のレンズだ

F5.6  EOS kiss x3, AWB これくらい絞れば最短撮影距離でもスッキリと写る
★2011年8月に洞窟遺跡の調査に同行しspiralが撮影係を担当した。以下は、その中からの作例。洞窟内は背景が暗闇に支配されているため「ボケ味」が表現しにくい。多くの場合、深く絞りこんで撮影することになる。
F11 NEX-5digital, AWB, BULB撮影モード: 調査で見つかった祭壇のような構造物(鍾乳石)。長い年月が経ち、床面と一体化している。手前に転がっているのは12世紀頃に造られたとみられる土器の破片。この場面では絞り値F8でも撮影したが、F11の方が像がシャープな結果となった。本レンズの場合、回折による解像力の低下はF16よりも深い絞り値で起るようだ

F11 NEX-5 digital AWB, BULB撮影モード: 土器の破片群。一つの土器が砕け斜面を流れるように砕け散っている。この場面では2方向からLEDライトを照射し、バルブ撮影で写している。


F5.6 NEX-5 digital AWB: カタツムリやキセル貝等の死骸の堆積。こちらも三脚を立てて撮影している。照度が低く階調表現が軟らかい場合、解像力の高低がはっきりと視認できるようになる。やはりこのレンズには解像力が高いという印象を持つことができない
★撮影機材
KAV Kilfitt-Makro-Kilar E 2.8/40(M42) + Sony NEX-5 / EOS kiss x3


KilfittがMecaflex用に生産したTele-Kilar 4/105という名の美しい望遠レンズがある。デザインセンスの良いkilfitt社ならではの製品であり、私にとって喉から手が出るほど欲しい憧れの一本である。このレンズを手に取るチャンスにいつか巡り合うことはあるのだろうか・・・。

2011/08/03

ZOOMAR München Macro Zoomar 50-125mm F4 (M42)







ズームレンズの発明者Back博士の開発した
世界初のマクロ撮影用ズームレンズ
 ZOOMAR(ズーマー)社はオーストリア出身のDr F.G.Back(バック博士)という人物が1940年代半ばに創設した米国ニューヨークに拠点を置く光学機器メーカーである。バック博士は1946年に世界初のズームレンズとなるZOOMAR 2.9/17-53(16mmのシネカメラ用)を発明した人物として知られている。1959年にはスチルカメラ用にZoomar 2.8/36-82を開発し(こちらも世界初)、Voigtlanderのブランド名でOEM供給した。写真用語として定着したズームレンズの「ズーム」は彼が創設したZOOMAR社の社名から来た派生語である。同社はレンズの生産を委託していたミュンヘンのKilfitt(キルフィット)社を1968年に買収し、1971年までレンズの生産を継続した。
 今回紹介する一本はZOOMAR社のBack博士が設計し、ミュンヘンのkilfitt工場で1960年代後半に生産されたMACRO ZOOMAR 50-125mm F4である。設計があまりにも高度なため、製品化は到底困難とされていたマクロ撮影用ズームレンズを世界で初めて実現した銘玉であり、史上初のマクロレンズとズームレンズをそれぞれ世に送り出したドイツkilfitt社と米国Zoomar社が手を組んで生み出した意欲作である。レンズの構成は不明だがコンピュータ設計による複雑な光学系を持ち、光を通すとかなりの数の構成レンズを内蔵していることがわかる。最大撮影倍率は125mmの望遠撮影時で0.5倍に達する。被写体からレンズ先端までの距離(ワーキングディスタンス)を長くとることができるので、カメラを三脚に固定したまま、あらゆる撮影シーンに対応することができる。対応マウントはM42に加え、少なくともNikon, EXAKTA, Leica-Rを確認できる。レンズの外観に対する第一印象は、まるでコケシ・・・。ズームができる黒コケシだ!。美しいラインを持つ鏡胴形状やピントリングと絞りリングの側面についたゴムのヒダ、黒地の金属鏡胴をとりまくシルバーの太いラインなど個性的なデザインが目を引く。鏡胴の前方にはスライド式の金属フードがビルトインされており、たいへん凝った造りだ。
★F.G.Back博士
 Dr Frank Gerhard Back(バック博士)は1902年8月25日にオーストリアのウィーンに生まれ、ウィーン工科大学で工学修士(1925年)と理学博士(1931年)の学位を取得した。卒業後はウィーンで自営のコンサルティングエンジニアとして7年間働き、1938年9月から1年弱をフランスで過ごした後に米国へと移住している。ニューヨークではエンジニアとして数社を巡り渡り、1944年にResearch and Development Laboratoryという名の会社を設立している。その数年後にZOOMAR社を設立、同社の社長兼技術顧問に就いた。博士が現在のズームレンズの原形となる画期的なアイデアを考案したのは1946年のことである。
 Back博士は単なる技術者ではなく、科学者としての精神を持ち合わせていた。彼は20世紀最高の科学者Dr. Albert Einstein(アルバート・アインシュタイン博士)と深い親交があり、アインシュタイン博士の相対性理論が予言する重力レンズ効果の決定的な証拠を1955年の皆既日蝕中の天体観測によって捉えようと試みたのである。Back博士は太陽の重力によって引き起こされる星の光の光学的歪を写真に収めるため、観測用の特別なZOOMARレンズを開発し、1年がかりの準備期間を経た後にフィリピン諸島へと旅立った。このあたりの詳細はBack博士の1955年の著書「HAS THE EARTH A RING AROUND IT?」に詳しく記されている。残念なことに観測の2か月前、バック博士がフィリピン滞在中にアインシュタイン博士は他界している。
 Back博士は生涯を通じて光デバイス機器やズームレンズ技術に関する幾つかの重要な発明を行い、光学機器産業や写真産業の分野に大きな功績を残した。また天文、医療、産業、軍需など関連分野の発展にも寄与し、英国王立写真協会、映画テレビ技術者協会、米軍技術者協会などから名誉ある賞を受賞している。博士は1970年にZOOMAR社を退き、1983年7月にカリフォルニア州サンディエゴで死去している。

★入手の経緯

 本レンズは2011年2月にドイツのクラシックカメラ専門業者Photo Arsenalのオンラインショップから購入した。商品の解説ページに記されていたランクはAB(near mint)で、軽度の使用感はあるが状態の良い完動品とのこと。商品はドイツからの空輸され、購入手続きを経てからたったの3日で私の手元に届いた。クレイジーな速さである。このレンズは生産本数が僅か1000本と稀少性が高いため、eBayでは1000ドルを超える値で売り出されていることも珍しくない。僅かなホコリの混入はあったが、ガラスに拭き傷やカビ等の問題はなく状態は良好、たいへんラッキーなショッピングであった。

フィルター径 52mm, 絞り羽根 7枚, 重量(実測) 615g,焦点距離 50-125mm,最大撮影倍率 1:2(125mmの望遠時に0.5倍で最大となる) 絞り値 F4-F32,絞り機構 自動/手動切り替え式, 鏡胴の中央部にはZoomar社のロゴである。Zの文字の中央部にkilfittのマークが記されているフィルタ枠に記されたメーカー名もKilfittではなくZoomar Münchenとなっているので、 この個体が製造された時期は1968年~1971年頃だったに違いない。ズーマー社の社名でもありレンズ名でもあるZoomarは、ズームレンズの語源にもなっていりが、元来はブーンという音を表す擬声音で飛行機が急角度で上昇する意味
本体にビルトインされているスライド式フード
★撮影テスト
 収差を徹底して抑え込み解像力を高めたマクロ撮影用レンズと、全ての焦点距離で画質を均一に安定させる高度な補正機能を備えたズームレンズ。これら2種のレンズの設計を「攻め」と「守り」に例えるならば、マクロ撮影用ズームレンズを実現するとは、1本で攻守の双方に秀でた万能レンズを生みだすようなものである。それがいかに困難な開発であるのかは私のような一般ユーザにも容易に想像することができる。この種のレンズを製品化する事など1960年代には到底困難とされていたに違いない。それを実現可能にしたのはコンピュータによる設計技法の進歩とガラス硝材の高性能化である。こうした機運の到来によって1960年代後半に生みだされた世界初のマクロ撮影用ズームレンズが今回紹介するMACRO ZOOMARというわけだ。
 MACRO ZOOMARの描写力を卑しくも単焦点マクロレンズやズームレンズと比べ、良いだの悪いだのと厳しく評価することに大した意味はない。本レンズの長所はそれ以外のところにあるからである。以下にレンズの描写について気づいた点を列記しておく。
  • 開放絞りにおける解像力は高くない。望遠側では甘くソフトな像になり、高倍率撮影を行うと被写体の輪郭部に薄らとハロが発生することがある。マクロ撮影を行う場合は絞って使うことが前提のようだ。
  • フィルム撮影では問題視されることのなかった色収差(軸上色収差)が、デジタル撮影では顕著に表れる。被写体の輪郭部が色づいて見える事がある。
  • ボケ味は悪くない。2線ボケやグルグルボケによって背景の像が乱れることはない。
  • 発色は癖もなくノーマルだが、開放絞り付近で黄色に転び温調なカラートーンになることがある。
  • 階調表現はなだらかで良好。真夏日の条件下でも暗部は良く粘り、黒潰れが回避される。
  • 姉妹品のVoigtlander Zoomar 2.8/36-82mmは画像端部で像が流れるが、本レンズではこの点が改善されている。
 以下、順を追ってフィルム撮影とデジタル撮影による作例を示す。もちろん無修正・無加工だ。

★フィルム撮影
Canon EOS kiss + M42-EOSアダプター
F11 銀塩撮影 FujiColor Super Premium 400: 真夏日の高照度な条件下においても暗部がよく粘り、階調表現が焦げ付くことはなかった
F8 銀塩撮影 Euro Print 400(イタリア製): このフィルムを用いた作例の多くでノイズが顕著に出てしまった。マクロ撮影では手ぶれ防止のために高感度フィルムを用いるケースが多くなるのでフィルム選びは重要
★デジタル撮影
Nikon D3 + M42-Nikonアダプター(補正レンズの無い薄型タイプ)
フランジバックの規格によりNikonでは無限遠のピントを拾うことはできないが、5m先程度までなら合焦は可能なので実用的にはこれで充分だ
左はF4で右はF8。Nikon D3(AWB, ISO1250), 焦点距離 75mm: 開放絞りでは結像が甘い
F5.6, Focal Length 50mm(上段)/125mm(下段), Nikon D3(AWB, ISO800)  :この通りにボケ味は悪くない。この作例では発色が黄色に転び、実際よりも温調カラートーンになっている。トマトなのに人参みたい
F11 Nikon D3 digital(AWB,ISO800):  焦点距離50mmの広角側では、このくらいの最大撮影倍率となる。花びらの輪郭に色収差がはっきりと見える

 MACRO ZOOMARを皮切りにマクロズームレンズが次々と登場したことで、ズームレンズの持つ利便性をマクロ撮影の分野でも享受できるようになった。焦点距離が固定されてしまう単焦点レンズを用いた撮影では、画角調整の必要が生じる際の対応を三脚の位置決めからやり直さなくてはならないが、ズームレンズではこの過程が省略されるため、微調整を速やかに終えることができる。このレンズはプロ向けに造られたのであろう。