おしらせ


2009/12/18

Piesker Berlin VOSS 35mm/F2.8 (M42)
ピエスカー・ベルリン フォス


雲の隙間から太陽が顔を出す時
VOSSのシャッターチャンスが到来する。
絞り全開!

 欧州系レンズの銘板には、それを製造した都市の名が刻まれていることが多い。イエナと言えばツァイス、ウルムと言えばシャハト、ミュンヘンと言えばシュタインハイルやエンナの名が挙がる。ゲッティンゲンならばイスコ、パリならアンジェニューだ。ちなみに日本の場合は都市名の刻印こそ無いが、チノンは茅野市。どうでもいい事だがキャノンは観音(様)が由来である。さて、ベルリンの都市名を冠するレンズメーカーと言えば、真っ先に名があがるのはシネレンズで有名なAstro社であろう。これに対しPiesker(ピエスカー)社はドイツ人カメラ愛好家の間でも正体不明扱いされている極めてマイナーなメーカーだ。
 Piesker社(Paul Piesker & Co)は旧西ドイツのベルリンに確かに存在していた光学機器メーカーで、1951年から望遠レンズを中心に35/2.8, 40/4.5, 85/2, 100/3.5, 135/5.5, 150/5.5, 180/5.5, 200/5.5, 200/5.6, 250/4.5, 250/5.5, 400/4.5, 400/5.5, 600/5(for TV), 800/5(for TV)の焦点距離を持つレンズを製造していた。どのレンズもデザイン性に優れ、しっかりとした鏡胴の造りが特徴だ。Gary Cullen と Klaus Rademakerの著書"exakta: obscurities"(2001)には、このレンズが米国を主な販売先としていたと記されている。ラインアップにはpiconやらtele-picon, piconarなどピコピコとした愛嬌のあるレンズ銘が多く、他にはastraやvoter, vossなどの名がある。対応マウントはLeica scriew/ M42/ EXAKTA/ HASSEL scriewなどが存在している。Piesker社に関する情報は極めて少なく、検索エンジンで探しても何も出てこない。文献も上記の本に数行の短い文による紹介とレンズ3本分の写真があるだけだ。会社のフルネームから察するに(全くの推測だが)、Paul Pieskerという名の人が創業者のように思える。googleで検索すると幾つかの海外のブログにレンズのオーナーによる投稿記事が見つかり、例えば40mm/F4.5のPiconarについてはこちらに中国人レンズ収集家によるレンズの写真と撮影画像のサンプルが掲載されている。Piconarは前玉径が小さく鏡筒が短いので、シンプルな3枚のレンズから成るトリプレット型かテッサー型であろう。癖のない自然な発色が特徴のようだ。望遠系のレンズについてはManual focus forumのこちらこちらの掲示板に投稿記事がある。シャープだがコントラストが低く、二線ボケが発生する傾向があるようだ。
 今回、私が入手したものは1951年頃に製造されたPiesker社の初期の製品であり、35mmの焦点距離をもつVOSS(フォス)という名のレトロフォーカス型広角レンズ(M42マウント用)である。語源が何かは定かではないが、ノルウェー語でVOSSは滝という意味がある。レトロフォーカス型としては1950年のアンジェニューに次ぐかなり早期の製品になる。同社の多くのレンズには銘板にPiesker & Co Berlinのメーカー名が記されているが、本品には初期のPiesker Berlin銘が記されている。
 本品はプリセット絞りであり、絞りリングには各指標においてクリック感がなく、絞り羽根は実質的に無段階で開閉する。鏡胴はアルミ合金製で、重量感があり頑丈な仕上がりになっている。35mm/F2.8というスペックにしては前玉径が小さいため、画像周辺部の画質や光量の低下が心配だ。まぁレアでかっこいいデザインなんだから、ベンチマーク的な描写力を期待するのは求めすぎなのだろう。個性的な描写を楽しむことが出来れば、充分に価値のあるレンズである。

焦点距離: 35mm, 絞り値: F2.8-F16(プリセット), 最短撮影距離: 約27cm, シリアル番号S/N: 60029(←29本目という意味だろうか?), 重量(実測):166g, フィルター径:38mm前後(特殊径) , 本品はM42マウントである, 後玉の突き出しが殆ど無いためEOS 5Dでもミラーに干渉することなく使用できる。レンズキャップには被せ式42mmのドイツ製汎用ラバーキャップを使用している。42mmなのでリアキャップとしても兼用できる。プリセット絞りのためマウント部に絞り連動ピンはついていない。ピン押しタイプのマウントアダプターを用いる必要はない

フィルター径が特殊なサイズなので、フードをつける場合にはねじ込み式の汎用品が使えない。被せ式のフードで内径42mmのものを着けるしか方法はない。写真はマミヤの二眼レフカメラ専用フードをつけた様子。このフードは開口部が正方形であり、標準レンズのフードよりも若干深いので、ケラれるかもしれないと心配したが使ってみた結果はセーフであった
  
入手の経緯
 本品は2009年11月19日に米国の中古カメラ大手ゴー・ケビンカメラのeBay店にて購入した。Piesker社のレンズは焦点距離の長い望遠系レンズがネットオークションに度々出品されている。流通している製品にはExaktaマウントのものが多い。これに対し85mm以下の焦点距離を持つレンズは極めてレアであり、35mmの広角レンズにお目にかかれたのはこの時が初めてであった。紹介されていた商品の状態はMinty(MINT-)で前玉のコーティングの軽度のスポット状剥離があるとのこと。写真で見る限り実写への影響は皆無のレベルであった。いつも、お世話になっている安全な業者なので、品質に不安はなかった。Fedexにて4日後に届いた品は解説どうりの美品で、前玉の剥離は気にならない程度の僅かなレベル。ヘリコイドの回転も快調で文句のない品であった。

試写テスト
開放絞りでの描写
VOSSの描写は絞り解放での結像がかなり甘く、球面収差を生かすチューニングのようだ。ポワーンとしたソフトな写真になり、ピント面の解像は高くない。フレアも出やすいのでフードは欠かせない。ボケ味は柔らかく綺麗だが、被写体と背景の距離関係によっては乱れ気味になり、弱いグルグルボケや強い二線ボケが出るので、レンズの性質をよく把握し、絞りを開ける際は慎重になったほうがよい。なお、ピントの山が掴み難いという事は特になかった。
 このレンズは晴天時の撮影で絞りを全開にするとハロが発生し、結像面のハイライト部が美しい光のオーラを纏う。しかもピント面はそこそこシャープなのだ。アンジェニューを連想させるような甘くてミステリアスな描写がVOSSの大きな特徴といえる。アンジェニューよりも最短撮影距離が短いのもグーだ。このレンズはかなり気に入った!

F2.8(開放) sony A7R2(WB:日光)

F2.8(開放) sony A7R2(WB:日陰)

F2.8(開放)sony A7R2(WB:日陰)
F2.8(開放)sony A7R2(WB:日陰)















 




1~2段絞った場合の描写
 1段絞ればハロは消失する。諸収差が減少し画質が改善する。更に2段まで絞れば結像はかなりシャープになり、ボケの乱れは完全に収まる。
 他にもレンズの特徴を箇条書きにてまとめると、
  • 最短撮影距離が28cm弱なので被写体にまぁまぁ寄れる
  • 発色は癖が無く鮮やか
  • ボケ味が柔らかく綺麗
  • コーティングが単層のため逆光に弱くフレアが発生しやすい。フードの装着は欠かせない
  • 画像周辺に色ずれが発生する。コンパクトなわりには明るいレンズなので、設計に無理があるのだろう。色分散が大きく、倍率色収差の補正が不十分
 このレンズによる撮影画像は、コントラストが低く、暗部が浮き上がり、灰色っぽい濃淡領域(中間諧調域)が増す傾向にある。中間諧調の画素密度が多く(大きく)なり、見かけ上は濃淡の空間変化がゆっくりでなだらかに見えるようになる。これが微妙なトーンをしっかり拾っているかのような効果を生み、繊細な描写を可能にする。VOSSは明らかに中間階調の豊かさを楽しむ類のレンズと言える。アンジェニューと同様、このレンズもかなりのマジシャンなのかもしれない。以下、撮影結果のサンプルである。

F2.8 開放絞りでの撮影結果はだいぶソフトだ。合焦面でも結像が甘くポワーンとしている

F4 1段絞るとそれなりにシャープになる

F2.8 VOSSの特徴が良く出た画像サンプルだ。晴天下で絞り解放にて撮影するとハイライト部が美しいハロを纏い素晴しい画になる。しかもピント面はそこそこシャープなのだ。背景の玉ボケが少しグルグルと回っているが気になるレベルではない

F8 絞り込めばピント面はかなりシャープだ。開放絞り付近で見せたソフトな性格が豹変し、切れ味のある描写になる

上段F5.6/下段F4 アウトフォーカス部までの距離がこの位になるとボケはかなり大きく乱れ、ごちゃごちゃしたものが入ると目障りになる。背後ににどんな被写体があり、被写体と背景の色の調和はどうかなどを考え入れ、絞り値を変えてボケ具合を調整する必要がある。このレンズの場合、ボケ味が柔らかいので許容範囲だ

上下段ともF5.6 赤の発色はこの通りかなりビビット。ボケ味がたいへん柔らかい
F5.6 他の色も鮮やか(色が飽和気味ではあるが・・・)
F8 窓に写った木のあたりが合焦点だ。中央部はシャープで高画質だが周辺部がどうも怪しい。そこで、画像の周辺部(左上)を拡大したのが以下の写真

前の写真の周辺部(左上)を拡大表示したもの。最端部に近づくにつれ色ずれが発生している。倍率色収差に由来するこのような色ずれは、デジタルカメラの場合、絞りこみをおこなっても制御ができない

F5.6 露出補正がピシャリと合う時の諧調表現はたいへん繊細だ
 
F4  最短撮影距離が約27cmなのでコスモスの花がこのくらいの大きさになる。なかなか寄れるレンズといえるだろう 

撮影環境: EOS Kiss x3 + Piesker VOSS 35mm/F2.8 + マミヤ二眼レフ用レンズフード(43mm径)


 VOSSの描写には、はじめあまり期待していなかった。よい意味で裏切られたので大変うれしい。これだからクラシックレンズ遊びは止められまへん。



2009/12/11

VOMZ MIR-1B (МИР-1B) 37mm/F2.8 (M42)
ミール1B


半世紀もの間、基本設計を保ち続けた
ロシア・オールドレンズ界の伝説的なレンズ
 MIR-1Bは1992年代から2004年まで、ロシア・モスクワの北西400-500kmにある地方都市VologdaのVologda Optical-and Mechanical Plant(VOMZ)という光学機器メーカーで製造されたレトロフォーカス型広角レンズである。同メーカーはレンズの他に銃の照準器や暗視鏡などの軍需品、ミシンなどの日用機器を製造している。なるほど兵器を造っているメーカーのことだけはあり、レンズのデザインもどこか色気が無いというか兵器っぽい香りがする。しかし、こうした事実とは対照に、レンズにはMIR(平和)という穏やかな名がつけられている。
 さて、本品はカールツァイス・イエナのFlektogon 35mm/2.8(1952年リリース)をベースに1954年代にVav­ilov State Op­ti­cal In­sti­tuteによって設計され、1958年にベルギー・ブリュッセルの万博でグランプリを獲得したMIR-1の後継であり、1992年のマイナーチェンジを経て再リリースされた同シリーズの最終形態である。レンズを設計したのはD.S. Volsov(Д. С. Волосов)[1910-1980]という光学設計を専門とする物理学者で、彼はバリフォーカルレンズなどの複雑な光学設計法を1947年に開発するなどロシアの写真レンズ史の発展に寄与した人物である。モデルチェンジの度にデザインが変更されコンパクトにもなったが、基本設計に変更はなく、光学系はMIR-1と同一である。2004年まで製造されていたわけであるから、同一の光学系を持つレンズとしては極めて息の長いモデルと言える。グランプリを獲得したため、ロシアのレンズの中では伝説的なレンズとして語り継がれている。

 37mmというと焦点距離は奇異に思えるかもしれないが、35mmのレンズの多くが表示よりも焦点距離が若干長いのに対し、MIR-1Bの焦点距離は正確に37mmであることを考えると、実際の画角は35mmレンズより僅かに長い程度である。50㌦もあれば美品が買える極めて安価なレンズであるが、どこまで実力を発揮してくれるのか、その意外性を楽しみたい。

レンズ構成:5群6枚, 絞り値:F2.8-F16, 絞り羽根:10枚, プリセット絞り, 最小撮影距離:0.7, フィルター径:49mm, 重量(実測): 186g,  絞り羽根の枚数は10枚もあり解放から最小絞りまでほぼ円形。本品は1992年製のM42マウント仕様。マウント部に絞り連動ピンはついていない。ピン押しタイプのマウントアダプターを用いる必要性はない
 
入手の経緯
本品は2009年11月にeBayにてロシアの業者が新品という触れ込みで50㌦(4500円)にて販売していたものだ。本レンズのeBay相場は40㌦から50㌦くらい、送料・手数料込みで70㌦もあれば買える。国内相場は7000~8000円くらいであろう。即決価格で購入したが届いた品は僅かに使用感のある中古品であった。ちなみに先代のアルミ鏡胴モデルの方が相場価格はやや高く、eBayでの取り引き額は60㌦位である。中古市場の流通量は多いので、状態の良いものをじっくり選んで購入するとよいであろう。

撮影テスト
 Carl Zeiss JenaのFlektogonに近い設計を持つだけのことはあり、本品は優れた描写力を備えている。実際にフレクトゴンと撮り比べてみたところ、シャープネスはフレクトゴンと同等の高いレベルであり、開放絞りでも結像に甘さはない。モノコート仕様にしてはコントラストが高く、色のりはなかなか良い。倍率色収差や歪曲も良く補正されている。気になった点といえば、逆光撮影時にゴーストが出やすい事くらいだ。これだけの性能を持ちながらフレクトゴンの1/3から1/4の値段で買えてしまうのだから、コストパフォーマンスは抜群である。ピントの山が掴みにくいと言われることがあるが、結像が甘いからではなく、ヘリコイドの直進が他の一般的なレンズよりもゆっくりなためである。ピントを素早く合わせるには不便かもしれないが、じっくりと高い精度で合わせるには、むしろ好都合といえるだろう。絞り冠の回転が逆方向のため、慣れるまでにちょっと時間がかかる。最短撮影距離は70cmとやや物足りないかもしれない。以下にテスト撮影の結果を示す。

F8:アレレ、安物にしては凄くいい描写だぞ。右側に掲げられた赤の看板が実際よりも濃く派手な発色だ。空の青も濃い
F8 絞ればそこそこシャープに写る。木の辺りの暗部に締りがありコントラストが高いことがわかる。それにしてもヌケが良く、すっきりと写るいいレンズだ♪(早大理工新校舎)
F5.6 逆光になるとこの通りにゴーストがでる
F2.8 こちらも開放絞りでの結果。背景のボケはユラユラと乱れ面白い

撮影環境: MIR-1B + EOS Kiss x3 + ハクバ・ラバーフード


 このレンズに対する写真家の評価は賛否両論で、畏敬の念を抱く人もいれば酷評する人もいる。テスト撮影の結果を見る限りでは、かなり実力のあるレンズのようだ。グランプリを獲得したのもうなずける。

2009/12/03

Carl Zeiss Jena Flektogon (M42) 35/2.8(1st silver type) Restored!

焦点距離/絞り値: 35mm / F2.8-F16(プリセット絞り), 重量(実測):188g, フィルタ径:49mm,最短撮影距離:36cm, 本品はM42マウント用だがEXAKTAマウント用も存在する。本品はプリセット絞りである。マウント部に絞り連動ピンはついていないので、ピン押しタイプのマウントアダプターを用いる必要性はない。チューリップの蕾のような流線型の美しい鏡胴フォルムが特徴。レンズ名はラテン語の「曲がる、傾く」を意味するFlectoにギリシャ語の「角」を意味するGonを組み合わせたのが由来である

現代のコーティングを纏い蘇った
新生フレクトゴン(初期玉)

 「えっ。クモリですか?」ヤフオクを通じてそれまで所有していたレンズを売却したところ、売却先である山形のnavyblueことYさんからメールで連絡があり、レンズの中玉にクモリが見つかったのだ。Yさんのメールには中玉に光を通した写真が添付されており、確かにクモリである。クモリが発生するとガラスの表面で光が散乱しフレアが発生する。また、レンズの屈折率が変化し、収差の補正計算に狂いが生じるため、レンズが本来持っている描写性能を発揮できなくなる。私はこのレンズを用いて過去に「親子三代フレクトゴン祭」と題したブログ記事を発信していた・・・。そう、フレクトゴン35mm、初期玉のシルバー鏡胴モデルである。
フレクトゴンの初期玉と言えば、東独VEBツァイス社のハリー・ツェルナーとルドルフ・ソリッシがcontax版Biometarをベースに設計し、1952年に登場したドイツ初の一眼レフカメラ用広角(レトロフォーカス)レンズである。現在も絶大な人気を誇るフレクトゴンシリーズはこのモデルからはじまった。レトロフォーカスとは、焦点(=フォーカス)をカメラ側へと後退(=レトロ)させるという意味である。広角レンズは本来後玉と焦点の距離(バックフォーカス)が短くなるため、これらの間にミラーの稼動域を必要とする一眼レフカメラへの搭載は構造的に不向きとされていた。この問題を克服するため光学系に凹レンズを挟み、焦点を後玉側からカメラ側へと後退させ、バックフォーカスを長くする方法が導入された。余分なレンズを1枚挟むのだから、暗くはなるし収差のコントロールもより高度になるが、この方法によって広角レンズが一眼レフカメラにも容易に搭載できるようになった。こうして生み出されたフレクトゴン35mmは一眼レフカメラ用広角レンズのパイオニア的存在なのだ。
再コーティング施工前のクモリ入りレンズ。このスケールからの肉眼によるクモリの発見は難しい

ところがレンズの中玉に強い光を当て拡大すると、この通り。はっきりとクモリが確認できる(Yさん提供)
 

さて、クモリのことを知った私はYさんに謝罪し、全額返金&返品で対応するつもりでいた。ところがYさんは自分で修理し所有することを希望された。申し訳ないので、せめて修理経費ぐらいは私で持たなくてはと一部返金を申し出た。これがきっかけでYさんとのメールによるやり取りが始まった。クモリに対するリペア方法はいろいろあるようだが、調べてみると2つの方法に大別できることがわかった。クモリが軽度の場合にはクリーニングやメンテの一環として、特殊な溶剤を用いた簡単な処置で対応する。溶剤の成分など詳しいことは分からないが、ある種の洗浄液のようなものを用いるらしい。レンズ表面の傷を拭きながら(傷を平らに削っているのだろうか?)、同時に洗浄する。ただし、この方法による改善は限定的で、クモリが重度の場合には古いコーティング皮膜を剥離し、表面を研磨してから、そのレンズに合わせた新しい皮膜を再蒸着する。 コーティングの再蒸着はクモリ取りの最後のカードなのである。その後やり取りを繰り返すうちに、Yさんにはフレクトゴンを完全に修理したいという気持ちが芽生え、問題の中玉に対しコーティングの再蒸着を施す完全な修理を行うことになった。それならばと、修理業者を何軒かあたってみることにした。問題なのは再コーティングにかかる施工費用である。WEB上では10万円だの何だのといった恐ろしい金額の情報が飛び交っていた。
修理の経緯
今回、コーティングの再蒸着をお願いしたのは山崎光学写真レンズ研究所である。蒸着ともなれば費用はレンズの売却代金を超えてしまうのではないかという懸念があったが、見積もりはホッとする額であった。この業者は私の職場近くに工房を構える修理のプロであり、雑誌などで度々紹介され高い評価を集めている。電話で訪問のアポをとり、後玉に不具合のあるフレクトゴン25mm/F4を持ち込んで見積もり依頼をしてみた。工房の奥から私を出迎えてくれたのは物腰の柔らかそうな職人さんであった。その横で若いお弟子さんのような方がせっせと作業をしていた。私の珍品フレクトゴン25mmを見るや「あんたフレクトゴン好きなの?・・・そう。ニコリ」である。2~3言葉を交わした後にフレクトゴン25mmの修理の見積もりをお願いした。私のフレクトゴン25は後玉径が約1cmと小さく、この工房の機械で対応できる1.5cm径を下回るサイズのため、残念ながら修理ができないことがわかった。しかし、再蒸着に必要な大体の価格帯を尋ねる事はできた。山崎光学の職人さんはわざわざ足を運びレンズを持ち込んだ私を労うかのように、後玉に対して何か特別の溶剤を塗ってくれた。「だいぶ良くなったでしょう?あなたのレンズはクモリではなくコーティングが焼きついているだけなので、これで大丈夫」と、イギリスから取り寄せた特別の溶剤で私のフレクトゴン25に簡単な応急処置をしてくださった。みると透明感がアップし少し改善している。目から鱗であった。職人さんは別れ際の私に対し、「このレンズはまだまだ使えます。大切にしていい写真を撮ってください」と優しい言葉をくれた。再コーティングの費用もリーズナブルだし、本命の1st-silverフレクトゴンの修理は山崎光学に依頼したい気持ちでいっぱいになった。そして後日、Yさんと相談し1st-silverの修理を山崎光学にお願いすることになった。
さて、この種の修理は初めての経験なので、どんな状態に仕上がって帰ってくるのだろうかと興味津々であった。嬉しい事にYさんは修理上がりのフレクトゴンを私に貸してくださるという。なんと寛大な方なのだろうと感心した。
レンズは約20日で山崎光学からYさんの元に戻った。下の写真のようにクモリはすっかりと取れ、中玉はクリアーになっていた。光を通すと紫色の反射光が誇らしげに輝いていた。うん、これならいい写真が撮れそうである。 山崎光学写真レンズ研究所の修理工によれば、蒸着を施す皮膜はレンズ1本1本に合わせ、本来の規格と全く同じになるよう調整されており、レンズ本来の描写を変えてしまう事はないとのこと。驚きの技術力である。
再コーティングを終え帰ってきた新生フレクトゴン。クリアな中玉だ

試写テスト
クモリを抱えたフレクトゴンの描写(前回ブログ参照)に対し、改善後のフレクトゴンの描写力は次のように向上した。

1.シャープネスの向上
改善前の1st-silverフレクトゴンはシャープネスが2ndや3rdよりも低く、特に画像周辺部でのシャープネスの低下が著しかった。原因はクモリがガラス表面における光の屈折率を変えてしまい、収差の補正計算に狂いが生じていたためである。次の写真を見て欲しい。改善後のレンズは画像の中心部はもちろん周辺部における比較においても、2nd-zeblaのシャープネスとほぼ同じレベルになった。
マンションのタイルを1.5m離れた位置から撮影した。画像周辺部(右下)を拡大した結果が次の写真である

左列が1st-silverで右列が2nd-zeblaによる撮影結果だ。写真画像をクリックするとさらに拡大した画像が表示される。前回同様に1st-silverと2nd-zeblaは3rd-blackよりも若干赤が強くでるようだ。両者の解像感は肉薄しており、肉眼で優劣を着けるのは難しい

2.再コーティングにより発色の性質に変化はあったか?
1st-silverと2nd-zeblaの発色は良く似ており、3rd-blackよりも赤や黄色などの暖色系が強くウォームトーン調になることを前回のブログ記事で示した。今回のテスト結果[上のタイル写真参照]においてもその傾向に変化はなかった。ただし、以下の写真に示すように2ndの方が1stよりも極僅かに黄色味を帯びることがわかった。
F2.8: 1st-silverの方が背景のアウトフォーカス部にある木の枝が僅かに白っぽいのに対し、2nd-zeblaのほうが僅かに黄色っぽい。中央下部の植木の葉も2ndの方が極僅かに黄色味が強い。シャッタースピードは同じで露出補正レベルは両方とも±0EVである

一部を拡大したもの。注意深く比較すると1st-silverよりも2nd-zeblaの方が若干黄色味が強いことがわかる
3.フレアの抑制とコントラストの向上:何と2nd-zeblaよりもフレアが出にくくなってしまった・・・
改善前の1st-silverは明らかに2nd-zeblaや3rd-blackよりもフレアが出やすかった。原因はやはり、中玉のクモリである。これにより光の透過率が悪くなり、レンズ内で内面反射が起こりやすくなっていたのである。フレアの影響は晴天下の撮影において特に顕著であり、クモリをとる前の比較では1st-silverの方が2nd-zeblaよりもコントラストが低下し、画像全体が白っぽくなっていた。しかし、改善後の1st-flektogonは光の透過率が上がりフレアが出にくくなった。暗部が落ち着きを取り戻し、メリハリの効いた描写になるとともに、画像全面的にもヌケの良い力強い発色が蘇ったようだ。最も驚いたのは逆光下での撮影におけるフレアの発生レベルである。明らかに1st-silverの方が2nd-zeblaよりもフレアの発生が少ないのである[写真(下)参照]。一瞬2nd-zeblaにクモリがあるのではと疑ったが、注意深く調べてもクモリはない。はたしてこの結果は新しく蒸着したコーティングの威力なのだろうか?興味深い結果である。6枚もあるレンズ構成のうちの中玉を1~2枚クリアにしただけで、ここまで描写力が向上するとは思えなかったので、逆光下で何度も同じようなテストを繰り返た。しかし結果は同じで、1st-silverの方が2nd-zeblaよりも逆光に強くなっていた。

F5.6 逆光での撮影結果。木の枝や葉にフレアの発生が確認できる。明らかに2ndの方が白っぽく、フレアが強く発生している

上段の写真の木の枝を拡大したもの。明らかに2nd-zeblaの方が白っぽくくすんでいる。フレアのせいだろう。1stの方が緑が鮮やかだ

F4: 今度は逆光下で遠景を撮影した結果である。遠景の木を御覧いただきたい。ここでも1st-silverの方が2nd-zeblaよりもフレアが出にくいという結果になった

4. レベル曲線の比較
1st-silverと2nd-zeblaの輝度レベル曲線は大変良く似ており、暗部の立ち上がり方や明部の落ち方などそっくりである。中央に2本のピークが立っており、このピークの上下関係に2本のレンズの性質の差異がみられる。1st-silverは明るいほうのピーク(図の青丸)が大きく2nd-zeblaは暗いほうのピーク(赤丸)が大きい。フレアの発生の影響が無い場合、2nd-zeblaの方が暗部をきちんと拾うようだ。
上の写真に対する輝度レベルの分布曲線。左が1st-silverで右が2nd-zeblaである

山崎光学で再蒸着をしたのは単層とはいえ現代的なコーティング皮膜である。1950~1960年頃のコーティング皮膜よりも光の透過率が高くなることは充分に考えられる。再コーティング後に1st-silverフレクトゴンの描写力が向上したのはあたりまえの結果である。しかし、それが2nd-zeblaよりも優れたレベルになったのは大変興味深い結果である。新たに蒸着した中玉のコーティングにより、1st-silverフレクトゴンの光学系に対する光の透過率が2nd-zeblaフレクトゴンのそれを上回るようになったということだろう。

テスト撮影の環境:Flektogon 35/2.8 + EOS kiss x3 + PETRI metal hood

黒いカメラに着けると存在感が増す

オーナーのYさんによる撮影サンプル
最後にYさんから届いた新生フレクトゴンの試写サンプルを掲示し、再度、レンズを新しいオーナーの元に送り届けたいと思う。新生1stフレクトゴンよ、21世紀も活躍してくれよ!!

先週の土曜日の試写でフィルムを変えたら、こってりした色が出ました。フレクトゴンは色のバランスが良いように思います。(Yさんによるコメント&写真提供)

逆光で豪快にゴースト&フレアの発生を狙っている。暗部はレストア前よりも締りがあるように感じる(Yさん写真提供)

手前の苔は肉眼でみた緑よりも明るく派手に見える(Yさん提供/コメントも)
★Yさんの撮影環境:FLEKTOGON 35/2.8(1st) + PENTAX LX(BLACK)

2009/11/16

LZOS INDUSTAR 61L/Z-MC 50mm/F2.8 (M42)
インダスター61L/Z-MC


きらきらと輝く六芒星(ろくぼうせい)
カメラ女子の間で人気沸騰中の星ボケレンズ
LZOS INDUSTAR 61L/Z-MC 50mm/F2.8 (M42 mount)
いまカメラ女子の間でこのレンズがブームとなっており、ブログのアクセス解析にも、その過熱ぶりがハッキリとあらわれている。ロシア(旧ソビエト連邦)のLZOS(リトカリノ光学ガラス工場)が1960年代から2005年頃まで製造したIndustar (インダスター) 61 L/Zである。このレンズはアウトフォーカス部の点光源が星型の形状にボケる、いわゆる「星ボケレンズ」として知られている[文献1]。
去る10月のある日、私はJR山手線のシートに腰かけ、東京駅から上野駅を目指していた。気が付くと目の前に若い2人のカメラ女子が立ち、何やらインダスターの話題になっていた。しばらく耳を傾けていると・・・

「A: ねぇ、メール見た?例の星ボケが出るヤツ(レンズ)なんだけど。」
「B: みたよ。インダスターでしょ?でも、あれってフィルターでも同じことできるんじゃないの?」
「A: うんそうなんだけど、やっぱフィルターとは効果が全然違うんだよねぇ~」
「B: そうなんだ。どこかで試せるといいけど」
「A:ネットにはいっぱい写真出てるから参考になるとおもうよ。スパイラルっていうブログみた?」
「B: あぁ。みたみた。マニアのブログでしょ。なんか難しい事がいっぱい書いてあったわ(←spiral補足:偏差値上げてね)」
「A: ヤフオクに出てるけど、1万円くらいからあるみたい。でもやっぱり現物を見ないと、状態はわからないわ。取引も怖いし。店で試せるといいんだけどね。10月8日の代官山は行ける?」
「B: 即売会だっけ?(←spiral補足:恐らく北村写真機店の体験即売会のことでしょう)。ちょっと予定が入ってるんだよね。友達と映画。何時からやってるの?」

おおよそ、こんな内容のやり取りであった。レンズが少し気になりヤフオクで相場を検索してみると、中古美品が18000~25000万円程度の額で取引されている。ちなみに6年前~1年前の相場は10000~14000円程度で安定していたので、レンズの相場が上昇したのはごく最近になってからのことだ。あるショップの店員によると、レンズを購入するのは主にカメラ女子なのだとか。今になってカメラ女子達がザワつきはじめたのは、紛れもなく写真家・山本まりこさんが9月に出した著書「オールドレンズ撮り方ブック」が発端であろう[文献2]。本ブログもフルサイズ機の普及に合わせ、過去のブログエントリーを刷新している最中なので、これはいい機会である。黒船の放つ波にのり、このレンズを再び取り上げてみることにした。

インダスター61L/Zのルーツは、ロシアの光学研究を統括するGOI(Gosudarstvennyy Opticheskiy InstituteまたはVavilov State Optical Instituteでもある)という研究機関が1958年から1960年まで少量のみ生産したプロトタイプレンズのIndustar-61 5.2cm f2.8(Zorki-M39 mount)である[文献3-5]。レンズを設計したのはG.スリュサレフ(G.G.Sliusarev)とW.ソコロフ(W.Sokolov)という名のエンジニアで、1958年に正のレンズエレメントに希土類のランタンを含む新種光学ガラスSTK-6を用いることで、それまでのインダスターシリーズに比べ、光学性能を飛躍的に高めたとされている。Industar-61は設計の古いFED-2用Industar-26M 50mm F2.8(1955年登場, Zenit-M39マウント)の後継製品として1962年に登場している[文献5]。この頃のIndustar-61は主にFED(ハリコフ機械工場)とMMZ(ミンスク機械工場)が製造し、焦点距離52mmや53mmなどのモデルが供給されていたが、1964年頃からはLZOS(リトカリノ光学ガラス工場)がレンズの生産に参入し、焦点距離を50mmとするIndustar-61Lを生産するようになった。
Industar 61L/Zの光学系(文献4からのトレーススケッチ): 左が前玉で右がカメラ側である。構成は3群4枚のテッサー型で、肉厚ガラスが用いられているのが特徴である。ランタン系の新種ガラスSTK-6が導入され正エレメントの屈折力が旧来からのガラスの倍にまで向上、ペッツバール和と色収差の同時補正が可能になり、F2.8の口径比が無理なく実現されている
Industarというレンズの名は1929年にロシアで始まった工業化5か年計画のIndustrizationから来ており、これにテッサータイプのレンズで共通して用いられる接尾語の"-AR"をつけてIndustarとなったそうである。61はロシア製レンズの中で用いられる通し番号で、テッサータイプの61番目の製品であることを意味している。
1960年代後半にはレンズをZenit-M39/M42マウントの一眼レフカメラに適合させたLZOS製Industar 61L/Z 50mm F2.8が登場し、この頃から絞り羽を閉じたときの形状が六芒星になった。レンズ名の末尾に付いている頭文字Lはガラスに用いられているランタンを差し、ZはZenitカメラ用を意味しているとのこと[文献6]。現在の市場に出回っている製品は大半がM42マウントであるが、比較的少量ながらZenit-M39マウントの個体も流通している。
Industar 61L/Zはガラス面に用いられているコーティングの種類に応じ、3種類のモデルに大別することができる。1つめは初期の1960年代から1970年代に製造されたモデルで、ガラス面には単層コーティングが施されていた。一方で1980年代初頭からはマゼンダ色のマルチコーティングが施されるようになっている。ただし、1980年代後期に製造された一部の個体からはアンバー系のコーティングが施された変則的なモデルもみつかる。Industar 61L/Zがロシアでいつまで生産されていたのか正確なところは定かではないが、市場に出回る製品個体のシリアル番号からは、少なくとも2005年まで生産されていたことが明らかになっている。
 
参考文献
  • 文献1 「OLD LENS PARADISE」 澤村徹著 和田高広監修 翔泳社(2008)
  • 文献2 「山本まりこのオールドレンズ撮り方ブック」 山本まりこ著 玄光社(2016)
  • 文献3 GOI lens catalogue 1963
  • 文献4 A. F. Yakovlev Catalog The objectives: photographic, movie, projection, reproduction, for the magnifying apparatuses, Vol. 1(1970) ロシア製レンズが全て網羅されているカタログ資料
  • 文献5 SovietCams.com
  • 文献6 レンズに付属した取り扱い説明書
入手の経緯
ロシアのカメラ屋から新品(オールドストック)を99ドル(送料込み)で購入した。レンズには純正のプラスティックケースとシリアル番号付きのレシート、ロシア語で書かれたマニュアルが付属していた。このセラーは2004年製の新品をかなりの数保有しているようであった。インダスター61L/Zは絞り羽に油シミの出ている個体が大半であるが、今回入手した2004年製の個体は比較的新しいためか油染みが全くみられなかった。レンズはヤフオクの転売屋が中古品を数多く取り扱っており、流通量も豊富である。ヤフオクでの相場は中古美品が18000~20000円程度、海外では中古美品が6000円~8000円、新品が8000円~10000円程度で取引されている。国内市場で新品はなかなか出ないようだが、出れば20000円~25000円あたりの値が付くのであろう。人気が過熱気味の日本だけの相場なので、現在は送料を加味しても海外から入手したほうがお得であることは間違いない。
最短撮影距離:30cm, 絞り機構 プリセット式,  焦点距離 50mm, 絞り値 F2.8-F16, 撮影倍率1:約3.5, フィルター径 49mm, 重量(実測):212g, 設計構成 3群4枚テッサー型
撮影テスト
50mmの焦点距離を考えると星ボケを効果的に出せるのは被写体に近づいて接写を行う時のみに限定される。撮影方法はバブルボケの時と全く同じで、まずはじめにピカピカ光る光源をみつけ、フォーカスリングを回してボケ具合を決定する。ちなみに星型にボケるのは絞りを少し絞った時である。続いてピント部を飾るメインの被写体を見つけピントを合わせる。このとき被写体へのピント合わせはフォーカスリングを用いるのでなく、手でカメラを前後させて行うのがポイントである。こうすれば一度決定した背後のボケ具合に大きな変化はない。
昼間の撮影は夜間のイルミネーション撮影よりもテクニックが求められる。星ボケを効果的に発生させるには太陽光の反射を利用するわけだが、肝心なのは太陽に対して半逆光の条件で撮影することである。カメラの露出補正は+1EV程度オーバーに設定しておいたほうが、星ボケがクッキリと写るのでおススメである。あと、今回は人に見せられるような作例が見当たらなかったものの、前ボケを利用するのもよい。
レンズはシャープな描写で知られるテッサータイプである。開放でもスッキリとぬけたクリアな像が得られ、解像力こそ平凡だが、鮮やかな発色とメリハリのある高いコントラストを特徴としている。ボケは四隅まで安定しており、グルグルボケや放射ボケは出ない。同じF2.8のテッサー型レンズでも本家ツァイスのテッサーやフォクトレンダーのカラースコパーなどは背後に僅かにグルグルボケがみられるが、このレンズに関しては四隅までボケの乱れが一切みられない。ピント部の画質は四隅まで安定しており、像面も平らで平面性は高いが、そのぶん立体感には乏しい。ゴーストやハレーションは逆光時でも全くと言ってよいほどでない。F2.8のテッサータイプとしては、かなり優秀なレンズである。
F5.6, sony A7(AWB)
F5.6, sony A7(AWB): 

F5.6, sony A7(WB:電球)

F5.6, sony A7(WB:白色電球)